第17章 WC予選での波乱
『あ、そっか。大ちゃんは初めて見るんだっけ。テツ君がキセキの世代を倒すために考えた、テツ君自身の技だよ。実際直接受けた事がないから仕組みとか分からないんだけど、どうやら体感した人は皆口を揃えるように消えたって言うの』
「消える…はっ、おもしれぇ!」
今吉「わはは、何だかんだで毎回派手やの、誠凛!いきなりトップギアでガンガン来るで。しかも誠凛の攻撃力は都内有数や。どうする、霧崎第一」
それからと言うものは酷かった。荒っぽいスクリーン、審判の死角から大我君の足を踏んだり、リバウンドを捕った後にわざと肘を張って振り回して来たり。藍からの情報によれば、霧崎と戦った相手校全てに必ず1人は負傷者が出ている。特にエースや主力メンバーは。日向先輩に向けられて振り下ろされた肘を、てっちゃんが腕で受け止める。てっちゃんは今まで見た事が無いくらいキレた表情をしていた。
木吉「俺が怪我するだけならいい。だが…仲間を傷付けられるのは我慢ならん。花宮ぁ!お前だけは必ず倒す!」
あたしは無意識に胸の前で手を握り組んでいた。再び再開した試合の中、10番の肘が大我君のお腹に入る。ついに耐えられなくなった大我君が、その10番に殴りかかろうとした。正直殴ってスッキリしてもらいたい気持ちもある、それほどまでに酷い乱暴なプレーだった。だけどこれはまだバスケの試合中。殴ったりなんかしたら出場停止以前に、あたしが許さない。
『大我ー!』
殴りかかろうとした大我君は前のめりに倒れた。テツ君だ。テツ君が大我君の両足を崩させ、暴力を振るわなくて済んだ。静かになった体育館では、十分に2人の言葉は聞こえた。
「何するつもりだったんですか?」
「何って…」
「カッとなって全部台無しにする気ですか。ムカついてるのは僕も同じです。けど僕達が先輩達のために出来る事は殴る事じゃない、バスケで彼らに勝つ事です」
「…あぁ、そうだな。悪い。すんません、一発殴ってください」
伊月「えっ!?」
「だって俺危うく…」
日向「いいよ別に!」
兄「…テツは相変わらずだな。変わってなくて安心したよ」
『うん、そうだね。テツ君にはずっとテツ君のバスケをし続けてほしいな』
ふと大ちゃんを見ると何とも言えなさそうな顔をしていた。