第17章 WC予選での波乱
『えっと…同点の時ってどうなるんだっけ?』
「普通延長戦ッスよね」
「けど今大会は時間短縮とかで延長戦の規定は無いみたい」
『という事は…両校互角、つまり引き分け!』
会場が歓声に包まれる中、コートではてっちゃんに皆がハイタッチを求めに走っていた。そして大我君とテツ君、真ちゃんが何かを話している。彼らの眼は誰のモノも清々しいモノだった。結果同様、内容的にも甲乙つけられない良い試合だった事は、この試合を見た誰の目にも明白だった。
「ふぅ。これで誠凛も秀徳もWCに近づいたッスね。俺はもう帰るッスわ。なんか今無性に練習したいし。2人に会う事があればWCで会おうって伝えておいてくださいッス」
「あ、私も帰るよ、きーちゃん。青峰君にも早くこの事報告したいしね。じゃあね、朱音ちゃん」
またWCで、という言葉を残して2人は帰って行った。2人の背中が見えなくなるまでその場に留まり、見えなくなったと同時にてっちゃんがいるはずの誠凛の控室に向かった。ノックを数回行いてっちゃんの返事を聞き部屋に入る。
木吉「…朱音か、どうした?」
『まずは引き分けおめでとう。とても良い試合だったよ」
木吉「おお、そうか。朱音に褒めてもらえるとはな」
『そうじゃないでしょ。てっちゃん、足見せて』
木吉「…やはり気付いていたか。だが大丈夫だ。ほら、こうしてジャンプだって…~っ!」
日向「ったく、やせ我慢しやがって」
『日向先輩!どうしてここに…』
日向「多分若槻と同じ理由だ。木吉、あの場面でお前が外す方が不自然なんだよ。ルーティンも乱れてたしな」
そう、あの時のてっちゃんの違和感はそれだ。ルーティンとはフリースローを行う前の一連の動作の事で、それがおかしかったのだ。
木吉「なんだよ、日向にまでバレてたのか」
日向「怪しいとは思ってたけど…次の霧崎第一戦、木吉。お前は出るな」
木吉「ふざけんなよ!去年と同じようにまた予選でリタイアしろってのか?おそらく今年が最後のチャンスなんだ。この膝がぶっ壊れても俺は出る!」
『てっちゃん!それってどういう意味!?』