第17章 WC予選での波乱
『限界云々より、真ちゃんは信じたんだね。自分を、仲間を』
会場は誠凛と秀徳コールで溢れ返っていた。
「すごい声援…」
「会場も盛り上がってるみたいッスけど、1番楽しんでるのはコートの中の選手なんスよねー。集中力が極限まで高まってハイになってるっつーかこう…」
『そうだね。こんな好ゲーム、そうそう見れるもんじゃないし』
「あー!なんかバスケしたくなってきたッス!」
涼君の言葉にさつきと2人で顔を見合わせて笑う。そして試合も一進一退の戦いが続く中、針は時を刻み続け終了へと近づいていった。第4Q残り30秒を切った。もう何度目かの秀徳のゴール1個分のリード。伊月先輩がスティールされてしまうが、テツ君がそれにしっかりと反応している。そして高尾君相手に消える(バニシング)ドライブも決まり、ボールはてっちゃんに渡される。ほんの一瞬、てっちゃんの左足を違和感が襲った。古傷がある左足に。いつもより少し遅いタイミングで跳んだてっちゃんに真ちゃんが追いつきブロックに跳ぶ。このままじゃまずいと思ったてっちゃんはバスカンを狙う事を優先させた。そして狙い通りバスカンからのツーショットを貰う。
「1本決めれば同点…」
「2本で逆転…」
『いくらてっちゃんが鉄心と呼ばれていても結局は人間。チームの命運がかかっているこの場面でこのプレッシャー。緊張しないわけがない』
まだ諦めない秀徳はリバウンドを捕るべくセットに入る。誠凛はてっちゃんを安心させるかの如く、口々に何かを伝えていた。そのおかげか、1ショット目は綺麗に決まった。そして得点は同点。
「さぁ、運命の1投ッスね」
だけどてっちゃんには違和感があるままシュートが撃たれた。だけどこのシュートは外れる。そう思った時にはボールがリングに当たる音が響き、リバウンドを捕るべく全員が1つのボールを全力で追う。大坪さんが捕ったかに思われたボールは、大我君によって奪われた。そしてそのままダンクを決めようとする大我君に真ちゃんがブロックのために跳ぶ。2人の手に挟まれ空中で止まったボール。そしてそれはどちらの手に渡るでもなく、試合終了のブザーが鳴り響いた。スコアは104対104。