第17章 WC予選での波乱
『だけど誠凛のスタイルは攻撃型チームバスケ。それに新しいんじゃなくて元に戻っただけ。去年の誠凛は日向先輩とてっちゃんの中外2枚看板、そして5人の走力とパスワークで点を取り合うラン&ガンのスピードバスケ。圧倒的に歴史の浅い誠凛は、あえて攻撃に特化し乱打戦に持ち込む事で去年東京都ベスト4にまでのし上がった。そしててっちゃんが戻ってきた事によって変化する事は、インサイドの強化とPGと一緒にボールを回す事によるパスの高速化』
だけど秀徳には大型パワーC、大坪さんがいる。彼はてっちゃんを押しのけリバウンドを捕り、そして真ちゃんでフィニッシュし第2Qが終了。インターバルなんていらないとでも言うように、会場の熱気は凄かった。
「きーちゃんどう思う?後半の展開」
「さっぱりッス!」
「本当ダメよね、きーちゃんって。朱音ちゃんは?」
『まず点の取り合いにはなると思うけど、パスを組み込んだ秀徳の連携攻撃をどう破るかがポイントかな』
「今の所誠凛に秀徳を止める手立てはない。けど秀徳は誠凛を全く止められないというわけじゃない。先にボロが出るとしたら誠凛ッスね。ま、けどそれは黒子っちがいなかったらの話ッス。キセキの世代幻の6人目は伊達じゃないッスよ」
いつの間にかあんなに降っていた雨が止んでいた。そして第3Qが始まる。大我君とてっちゃんが真ちゃんのパスによってかわされる。そして高尾君の手に渡ったかと思うともう1度真ちゃんへリターンし、そのまま3Pを決めた。
『!…今真ちゃん笑ってた…』
「えっ?見えなかったッス。てか朱音っち、こんな遠くからよく見えたッスね」
さつきに聞いても見えなかったとの答えしか返ってこなかった。けれどあたしは確かに見た。昔試合した時のように笑ってプレイする真ちゃんを。そして第3Qも残りわずか。ついに大我君の足にも限界がきたようだ。じわじわと点差が開いていく。
「…なんか変わったね、ミドリン。あときーちゃん」
「はあ?…ま、だとしたら変わったんじゃなくて変えられたんじゃないスか?なんでッスかね、あの人と戦ってから周りに頼る事は弱い事じゃなくて寧ろ、強さが必要なんじゃないかと思うんス。きっと朱音っちが言ってた事ってこういう事だったんスね」
『涼君…』
「ほら、その黒子っちが出てきたッスよ。試合はまだこれからッス!」