第17章 WC予選での波乱
テツ君の性質上、2度目以降の対戦となると効力が下がってしまう。しかもそれがホークアイを持つ高尾君相手なら尚更だ。拍車をかけるように今まで純粋な3Pしか撃たなかった真ちゃんがフェイクを混ぜてきた。が、最初に跳んでいた大我君は着地してすぐに超跳躍力を再び見せた。
「一瞬緑間っちの方が早い!」
『いや、このシュートは落ちる』
「なっ!あの一瞬でも触れてたんスか!」
大我君はちゃんとボールに触れていた。だけど連続ジャンプ、しかもスーパージャンプは負担がかなりかかる。大我君にとって真ちゃんがフェイクを取り入れた事はかなり分が悪かった。真ちゃんが外したボールはまだ生きてる。大我君が止めると信じていたのか、そこにテツ君は走っていた。そしてそのまま伊月先輩へパスを出しシュート。そしてリコさんはてっちゃんに何か指示を出す。大方大我君のヘルプにつくようにだろう。
真ちゃんにボールが渡り、大我君と向き合う。シュートかフェイクか、おそらく大我君の頭にはこれしかないだろう。結果大我君は跳び、真ちゃんはフェイクからのドライブで切り込んでくる。もう1度跳ぼうとした大我君の体は浮く事はなかった。並外れたジャンプの連発は、いくら鍛えたと言えどもやはり足への負担は大きかった。すかさずてっちゃんがヘルプに入る。その時、最初に感じた違和感の正体が分かった。てっちゃんが抜けた事により生じた穴に真ちゃんがパスを出した。そして更にはアウトナンバー、OFがDFより人数が多くて、そのままシュートは決まる。
「あの緑間っちがパス…自分のためのように見せて、本当はチームのために撃ってたってわけッスか」
『真ちゃんが1人で戦っていると時にあった隙がなくなった。そして真ちゃん自身がチームとしての勝利のために動いている。これは手強いなんてもんじゃないよ。だけどどうしてかな。誠凛にとってピンチなのに、今凄く嬉しい…』
「朱音っち…朱音っちは最後まできちんと見届ける必要があるッス。敵味方とか関係なしに」
涼君の言葉に溢れそうになっていた涙を止める。頑張れ、皆。心の中でそう強く願うと顔を上げ、視線をコートの中に戻した。ちょうどメンバーチェンジが告げられ、テツ君の代わりに水戸部先輩が出てきた。すると勢い良く後ろの扉が開かれたと思ったら、息を切らしたさつきがいた。