第17章 WC予選での波乱
木吉「久しぶりだな、花宮」
花宮「やぁ、あえて死ぬほど嬉しいよ」
木吉「試合中見えてたよ。秀徳戦わざと出てなかったな」
花宮「うん、悪い?」
木吉「良いか悪いかは知らん。ただ好かん」
花宮「…ふはっ。相変わらず真面目すぎてキモいな木吉。今日頑張って手の内全部晒そうもんなら、3戦全部ガチの勝負になってダリーじゃねえか。目先の1勝なんてどーでもいいんだよ。残り2つは勝手にお前らが負けるからな」
どういう事だと聞き返したてっちゃんに花宮さんは何も答えない。それどころか次の秀徳戦を頑張れと言ってきた。怪我早く良くなってよ、心配してるんだからさ、とも。あたしはてっちゃんがどういう過程で怪我をしたのかは知らない。けど今の言い方と花宮さんの性格上、花宮さんが何かをした事は明白だった。あたしは歯をギリッと喰いしばると、何事も無かったようにてっちゃんの元へ向かった。
『てーっちゃん。何してるの、こんな所で。他の皆と逸れちゃったの?』
木吉「朱音…お前は俺を応援してくれるか?」
『当たり前じゃない。あたしはずっとてっちゃんの味方であり続けるよ』
てっちゃんは安心したようにそれは心強いと笑って見せ、誠凛の皆が待っている場所に戻って行った。そしてあたしもある場所を目指す。
花宮「待ってたよ、朱音」
『…貴方に気安く呼び捨てしてほしくないんですけどね。それで、てっちゃんの怪我は一体どういう事なんですか?事によっては本気で許しませんよ』
花宮「相変わらずつれないね。まあそんな所も気に入ってるんだけど。それに俺は何もしてないよ、たまたま木吉の足にチームメイトの足が、ね。ここまで言えば朱音なら分かるだろう?俺もあの事故の事を思い出すと心が痛んで嫌なんだよ」
『…貴方って本当に最低な人間ね。けど今ココで言っても何もならない。誠凛をナメない方がいいですよ?それじゃあ次の試合が始まるんであたしは行きます』
不愉快そうに顔を歪ませる花宮さんの横を平然と歩いて行った。誠凛の皆なら大丈夫。それに次の相手は花宮さんじゃない。少し走って向かった会場ではすでに誠凛対秀徳の試合は始まっていた。そして外ではあの日と同じ、雨が降っていた。