第17章 WC予選での波乱
てっちゃんがボールを持ち、フックシュートのモーションに入る。けどそれにきちんと反応していた9番、鳴海君がブロックに飛ぶ。けどそこからてっちゃんは日向先輩にパスという選択に変えた。そして次のOFでは同じようにフックからパスという選択肢を予想させ、自分でダックイン。
桜井「あの7番のボールから手を離すタイミングは…遅くないですか?異常に…」
今吉「気吉はPGのパスセンスを持つ異色Cや。Cでありながらドリブル、シュートだけでなくパスも出せる」
『DFってのはそのどれが来るか予想して動くでしょ?言い換えればジャンケン勝負みたいなもの』
今吉「だが木吉はあの大きい手でバスケットボールをハンドボールのように掴めることで、常人なら離してしまうタイミングでも選択を変更出来る」
それに気付いた鳴海君は読み合い勝負は捨て、パワー勝負に出た。だけどそれこそがてっちゃんの十八番、鳴海君のシュートをブロックした。
『パスを積極的に組み込んだてっちゃん…木吉のスタイルを見て技巧派Cだと勘違いする人が多いけど、てっちゃんはCとして単純に強いです。あと、単純に強いバカがもう1人』
てっちゃんがブロックしたボールをテツ君がイグナイトパスによって大我君へ。ダブルチームについていたマークも対応しきれなかった。ボールを久しぶりに手にした大我君はそのままダンクを狙う。ダブルチームによってイライラしたであろう大我君は考えも無しに飛んだのか、額をリングにぶつけてしまった。
茉実「あのバカ…高すぎでしょうが!」
今吉「なるほど、確かに単純で強い奴(バカ)がいたんやな」
『あははは…』
そして第4Qまで、だんだんと点差が開いていった。
今吉「やはり木吉の加入はとてつもなくデカいわ。単純な攻撃力アップだけやなく、安定感が全然ちゃう。特にリバウンドや。誠凛のインサイドはもはや弱点どころか脅威や。強いCがおればリバウンドが獲れる。リバウンドが獲れれば思い切ってシュートが打てる。結果よく入る」
桜井「リズムが全く乱れない…相当信頼してるんだな、あのCの事」
桜井君の言葉に自然に笑みが浮かぶ。けどその笑みを長く続けさせてくれないのが奴だ。