第16章 高校生活をenjoyしようか
『えっ、火神君!?…行っちゃった。もうすぐゲーム始まるのに』
木吉「はっはっは。まあそんなに細かいルールじゃないから大丈夫だろう。それより朱音、智也さん今リコのお父さんのスポーツジムにいるんだな。この前偶然会って驚いたよ」
『あれ?言ってなかったっけ?』
木吉「聞いてないな。それよりも智也さん、心配してたぞ?ついに朱音に彼氏が出来た、俺から離れていってしまうって。相変わらず仲良いんだな、智也さんと」
『なっ!別に彼氏なんて出来てないよ!ただ…特別な人』
木吉「そうか。この前も誰かに告白されてたけど、朱音が心に決めた人がいるなら俺も智也さんも安心だよ」
『お兄ちゃんは兄バカだからね。てっちゃんもなんだかお兄ちゃんみたい。あ、そろそろ始まるよ』
実行委員により試合開始の笛が鳴る。審判をしながら頭の中に征ちゃんを思い出した。彼氏、じゃなくて彼氏になりそうな大切な人。左腕につけたブレスレットがじゃらりと音を立てた。征ちゃんが聞いてくれたように思った。それからあっという間に決勝戦。相手はリコさん、日向先輩、伊月先輩のいるクラスだった。リコさんによって作られた緻密なゲームプラン、日向先輩の正確な3Pトス、そして伊月先輩のイーグルアイによって隙をついてくるスパイク。さすがに苦戦させられたが皆の力が見事に発揮され、あたし達は優勝した。
「やったぜ!優勝だ!」
「やりましたね。僕今凄く興奮しています」
『それなら良かった。クラスの皆と一緒に何かをするって良いモノでしょ?』
テツ君と火神君は笑顔で頷いてくれた。それから最後にクラスメイト全員で写真をとり、球技大会は幕を閉じた。そしていつもと同じように部活が始まる。少しだけ違うのは、テツ君と火神君の動き。本当にわずかだけどチームの動きがよく見えている気がした。特に今まで少し荒っぽかった火神君の動きが。そして自主練の時間になると、最後まで残っていたのはあたしとテツ君、火神君の3人になっていた。