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It’s a miracle!!!

第5章 帝光中にて


『冷静になれば誰でも分かるよ。つまり大人数で歩いても何も得をしない。だから分担をしなければならない。けどペアは?となる。この文化祭は帝光中と鈴城中両方の行事。だから自然に帝光と鈴城の人が組むことになるんだけど、ここでまた一つ問題が発生する。最終的に決めるのは誰だ。それはもちろん生徒会長である赤司君とあたし。二人の意見が割れてしまってはいけないから、保留の場所にはもう一度行かなければならない。だったら最初から全部、あたしたちだけで行ったほうが一番無駄がないってこと』

…これは驚いた。答えはもちろん考え方もほとんど同じと言ってもいい。彼女は僕の心の中まで見えているのかと疑いたくなる。

『まあ落ち着いて考えればきっとみんな分かると思うから、谷山君たちに怒らないであげてね』

彼女は素敵な人だ。容姿はもちろんのこと、思考、動作、眼の動きも何もかも全て。そして僕にはない優しさというものを持っている。彼女の心に触れてみたい。

「…今回は若槻さんに免じて許してやろう。では、行こうか」

彼女は僕に頷いてくれて立とうとするが、膝に乗っている立花のせいで身動きが取れない状態だった。どうやら彼女の規則正しい心拍音と背中のリズムによって睡眠に入ってしまったようだ。僕と目が合うと、困ったように笑う。その動作もとても綺麗だった。

彼女が立花をゆっくり離すまで僕は待った。これさえ待てば、僕はまた彼女とゆっくり、それに今度は長時間話すことが出来るから。

ごめんね、と制服にできた軽い皺を引き延ばしながら僕の隣に立った。それだけでも嬉しいと思う僕はやっぱり可笑しい。谷山に呼ばれるまで、ひたすらにそのことを考えていた。

谷山「あ、あの、赤司さん。僕たちは何を…」

「僕と彼女が見て掃除が必要だったり机の補給が必要だったりと判断するから、それを連絡として動いてくれ」

『早瀬君と栗田君も。この前電話番号も送ったよね?分かんなくなったら電話してくれていいから。あ、藍のこともよろしくね』

あの二人は彼女の電話番号も知っているのか。…面白くないな。僕はひと声もかけずに歩いた。すると彼女も僕を追って来てくれたことに喜びを感じた。試合に勝っても1位を取っても何も感じない、この僕が。
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