第5章 帝光中にて
藍「私が護るんだから!」
と言った藍の言葉の意味が分からなかったけど、なんだか可愛かったので頭を撫でると、彼女は嬉しそうにすり寄ってきた。
校舎に案内してもらい、あたしたちの控室みたいなところに連れてきてもらった。そこには谷山くんたちがいた。
「君たちに来てもらったのは他でもなく、文化祭についてのことなんだが、今日は我が帝光中の使える教室を確保しようと思ってね。この学校には僕たちでさえ使ったことのない部屋がたくさんあるらしい。そこで今日は一緒に教室見学をしてもらおうと思う。異論はないな」
有無を言わさぬ言いっぷりに、さすがは赤司君だとまで思う。
「そこでだ。今のままじゃ効率が悪い。何故だか分かるか、谷山」
急に当てられてびっくりしているのか、谷山君の回答はしどろもどろだ。他の二人も続いたが結果は同じだった。と同時に赤司君から溜息がこぼれる。とこれまた同時にビクッと強張る3人の肩。
「じゃあ…立花さん、分かるか?」
少し挑発的な赤司君の眼だと思ったけど無視した。だって関わりたくないし。藍と赤司君の喧嘩…想像するだけで嫌だな。藍はああ見えて少し負けず嫌いだからな。ここでかなり負けず嫌いの凜子を思って苦笑する。そしてまた藍を見ると肩がプルプル震えていた。あ、これは限界か。
『はいストップ。藍、分かってるから。赤司君ももう少しヒント出してくれたら藍も簡単に分かるから。藍、おいで?』
入学した時からそうだった。昔からキレたら大変な子ではあったけど、キレさせる前にあやせばいい。そう思いあたしの膝の上に乗せ、抱っこのような形で背中を軽く叩くと、藍はいつの間にか上機嫌になっている。そして今もそうしている。
「…へぇ。まるで若槻さんは分かってるみたいな言い方だね」
あ、なーんか赤司君も不機嫌なんだけど。あたし、保母さんにはならないと決めた。今決めた。だってこんな駄々っ子ばっかり相手にするの無理!