第15章 summer vacation
あたしを待つ。征ちゃんはそう言ってくれた。あたしはゆっくりと話す。
『今日、あたしは征ちゃんにドキドキされっぱなしだったよ。繋かれた手にも、触れ合う肩にも、交じり合う視線にも』
「それはもちろん僕もさ。朱音からのバカという言葉にはずっと隠していた表情も崩れてしまったほどだ」
『征ちゃんも一緒だったんだね』
あたしは重力に負けた下がりっぱなしの自分の手を征ちゃんの腰に回す。征ちゃんに触れた時、征ちゃんの体がビクリと動いた。
「…ほら、今だって急に朱音に触れられたから心臓が驚いている」
『本当だ。心臓が早く動いてる。…あのね、征ちゃん。あたし今まで誰とも付き合った事が無いの。だから付き合うっていうのがどういう事か分からないんだ』
「僕だってないさ。朱音と同じ気持ちだ。それでも朱音に僕の隣にいてほしい。だから付き合ってくれと言った」
『うん。あたしだって征ちゃんの隣にいたい。けど、あたしにはまだやる事がある』
そうだ。皆をWC優勝という舞台に連れて行かなければならない。そのためにもあたし1人が浮いている訳にはいかなかった。
「…分かった。それじゃあWCが終わったら今度こそ返事を聞かせてもらうよ」
『ありがとう征ちゃん』
征ちゃんはもう1度強く抱きしめ、ゆっくりとあたしを離した。だけど隣に座り肩がぶつかり合うまでの近距離にいる。征ちゃんの体温が心地いいけど、恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。
『あ、そうだ。パワーストーンどうしよう…征ちゃんが全く同じな物買ってるとは思わなかったし…』
「あれは君に贈った物だ、朱音が付けてくれ。僕は朱音から貰った物を身につけておく。どうやら左手に付ける事でパワーが溜まり、右手に付ける事でその効果を発揮するみたいだ。だから左手に付けてWCまでパワーを溜めておこう。僕もそうする」
あたしと征ちゃんは早速互いのブレスレットを左手につけた。征ちゃんは満足そうにあたしの腕を見ると、あたしの肩に自分の頭を乗せ、朱音の匂いがすると一言。あたしも征ちゃんの良い匂いを感じていた。征ちゃんの匂いは他の誰よりも安心する。いつの間にかあたし達は眠っていたのだった。