第5章 帝光中にて
~5.帝光中にて~
部内騒動から早くも2週間が過ぎた。今ではお互いにユニフォームを取り合っているうちに、とんとんと彼女らの目の前にあったはずの壁を軽々と越えている。このまま行けば予選は難なく通過できるかなとも思う今日この頃。
そして今日は生徒会の日。
かと言ってこの前みたく部活を休んだりはしない。今日は授業中に抜け出して行くのだ。
茉実「朱音、私がいないからって泣いちゃだめだよ?」
凜子「泣くか!朱音、変な男に着いて行っちゃだめだよ?あ、やっぱ女の子にも!」
捺美「朱音ちゃん、私今日は起きて待ってるから」
雅「絶対に無事で帰って来てね!」
「「「「藍、後は任せた!」」」」
藍「任せなさい!朱音は絶対に私が護って見せる!」
『…何なのコレ』
別にお嫁に行くわけじゃないんだから、と言っても何故か涙はどんどん流れてくるし、服とかギュッて握られるから皺になっちゃったし、なんか涙やら鼻水やらで制服濡れてるし。やっと校舎から出られても後輩ちゃんたちが朱音せんぱーい!気を付けてくださーい!とか叫ぶモンだからなんか教室の窓という窓が全部開いて、あたしの名前が木霊するし。あ、今もかも。
藍はいいとして、一緒に行くからかは分からないけど、既によれよれになった早瀬君と栗田君にはきちんと謝っておいた。だけど彼らは、気にすんな、生徒会じゃなかったら俺らもきっとあの中にいるから。なんて笑うに笑えない冗談を爆弾投下の勢いで落としてくれた。
そしてこの前より早く感じた帝光への道のりを歩いていると校門の所に赤い髪の彼を見つけた。
「やぁ、若槻さん。元気だったか?」
『おはよう、赤司君。わざわざ出迎えありがとう』
笑って言うと彼は満足そうに着いて来いと幻聴が聞こえてきそうなほど華麗に、優雅に踵を返した。未だ挨拶を行えていない3人に挨拶は?と促すと早瀬君と栗田君は慌てたようにおはようと赤司君に声をかけた。
すると赤司君は立ち止まり、振り返って二人の方を見ると、無表情ではあるものの、少しだけ照れくさそうに小さな声でおはようと言った。うん、これはあたしの勘。未だに赤司君と距離を取っている藍が、突然あたしの手を掴んだ。