第15章 summer vacation
『えー、あっ君も出るならあたしも出たいー』
「朱音ちんはダメ~。朱音ちん今日スカートだし、パンツ見えちゃうよ~」
『ぶー。ま、今日はヒールも履いてるし、大人しく見てるよ』
火神君はまだあっ君に安い挑発を繰り広げている。それをもれなくあっ君はその挑発を買っていた。
木吉「火神もういいから。ポジション的にマッチアップ俺だし。1人で2人相手にするわけにはいかないだろう。今回紫原は俺、お前は氷室だ」
「えー?じゃあ俺の相手は…」
木吉「久しぶり。中学以来だな」
「…誰?」
木吉「参ったな、覚えてないか」
「中学時代やったっけ?忘れちゃった。それに弱い人わざわざ覚えたりしないからさ」
あっ君の言葉にムッとする。てっちゃんは強い。けれどキセキの世代である彼らからすれば、そうは思わないだろう。あたしはその時の試合は見ていない。けれどてっちゃんは当時に比べ確実に成長している。そしてそれを証明するかのように、試合開始直後にテツ君からイグナイトパスをもらい、あっ君の目の前でダンクシュートを決めた。
『わ!てっちゃんイグナイト取れるようになったんだ!』
木吉「まあな。朱音が頑張ってた分俺だって努力してたからな。けどやっぱり痛いよ。俺じゃそう何度も取れんな。それに…覚えてろとは言わんが正直参ったな。まあ忘れられちまったもんはしょーがない。バスケで思い出してもらうしかないな」
「いや…もういいよ。ごめ~ん、思い出したし。木吉鉄平。どうやら朱音ちんとも仲良いみたいだし、おかげでやる気出ちゃったなぁ…忘れたままの方がよかったかもよ?」
あっ君の言葉、そして雰囲気にあたしも鳥肌が立った。そしてあっ君の心と同調するかのように、晴れていた空には黒雲がかかり、ゴロゴロと雷の音が聞こえた。
氷室「敦!悪いが出番はもう少し待ってくれ。即席チームだから役割をはっきりさせよう。敦はDF、OFは俺が点を取ろう」
その言葉には、OFは俺1人で十分だと言っているようなものだった。あっ君は言われた通り、ゴール下から動こうとしない。中学の後半からそうだったように。