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It’s a miracle!!!

第4章 部内騒動


だが彼女たちからは何も返事はない。これじゃあ先輩たちの、皆の気持ちは何処へぶつけたらいい。これだけの本気が伝わらないなんて、あんまりじゃないか。

『…お願いします。汐音先輩の…彼女たちの気持ちをどうか受け取ってあげてください…』

気が付いたら新入生に頭を下げていた。監督とか、主将とか、堅苦しいモノは全て脱ぎ捨て、若槻朱音個人の思いとして。

1年「…顔を上げてください。こんなことをする朱音先輩は見たくないです。それに、先輩方も」

慌てて皆の方に目を向けると、一度は顔を上げた皆もそろってもう一度下げていた。全員の顔が上がったことを確認すると、その子は続けた。

1年「一つ、謝らせてください。先輩方、先程は軽率なことを言って本当にすみませんでした。私達は何も知らないのに、私たちの方がもっと朱音を助けることが出来るのに、もっと楽に勝たせてあげることが出来るのに、と思っていました。でもそれは只の自己満足です。でも朱音先輩と一緒にプレーがしてみたいと思ってここまで来た私たちの力、舐めないでくださいね。試合、受けてたちます」

ああ、本当に良かった。目つきが違う。今までは只々必死に相手を仕留めようとしていた眼。でも今は、好敵手に向ける眼。このチームはまた一段、成長できる。

暫くアップの時間を取り、今ティップオフ。今回はあたしはただ傍観者として見守り続けることしか出来ない。どちらの言い分が正しいと言えないのは、どちらも自分に正直に生きている証だから。

部員たちは自分で必死で考え、戦って、勝利を掴んだ。

1年たちも自分で必死に考え、戦って、勝利を逃した。

技量的にそこまで差はなかった。それでも部員たちが勝った。これはきっと思いの強さによって変化したのだろう。部員たちにとってそれは大きな自信となり、1年にとっては大きな糧となる。そうやって互いに成長しあうことが出来る。あたしたちには、そういう仲間がいる。

部員と1年達は自然と握手をし、今では喧嘩なんて嘘のように和気藹藹と話している。

『あー!いいなー!あたしもバスケがしたいっ!』

なーんて声をかけるとあたしもすんなりとその輪に入っていける。これがあたしたちが作った輪。今はまだ小さいけれど、これからどんどん大きくしていけばいいだけの話だから。
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