第14章 高校バスケの頂点
皆の心配そうな顔が見える。そうだ、あたしは皆を最高の舞台に立たせたい。IH、WC優勝という高校バスケ界の頂点に。そのために今、あたしがやることは1つしかない。深呼吸を1つ行い、額から流れる汗を拭う。そして改めて得点ボードを見ると点差は4点。勝つためにはOFは全て決め、DFは全て止めなければならない。出来るかどうかじゃない、やるんだ。大丈夫、あたしは1人じゃない。皆がいるんだから。
綾「このまま勝たせるわけにはいかない!」
『あたしだって負けるわけにはいかない。皆の夢がかかってるから』
綾「その皆皆って言うのが昔から気に入らないのよ!」
綾は我武者羅に攻めてくる。けれど考えのない攻撃はどうしても単調になりやすい。あたしはボールを奪う事に成功し、そのままカウンター。そして立翔7番のOFにも凜子がしっかりと反応し、優希の3Pが決まった。ここで逆転し、会場は一気に湧いた。残り時間8秒で得点は1点差で誠凛が有利。最後のOFである綾の攻撃を止めればあたしたちの勝ちだ。
『最後まで気を抜いちゃダメ!全力で止めて、もう1ゴール決めるよ!』
「「「「「はいっ!」」」」」
喝を入れ綾に向き合う。綾は右にフェイクを入れドライブ。からのターンオーバー。次にロールを入れ逆をついてきた。しかしあたしには綾の動きは手に取るように分かってしまった。ゾーンに入っているおかげでもあるが、綾の勝負所でのパターンは昔から変わっていなかったから。ボールをチップし、ブザービートと共にダンクでリングに叩き込んだ。
「「「「「「朱音ー!」」」」」」
皆が集まってくる。ゾーン状態が極限まで来ていたあたしは、崩れるようにその場に座り込んだ。茉実達が抱き着いてくる。そして実感した、あたしたちは優勝出来たんだと。ギャラリーに眼を向けると征ちゃんが優しい笑みで拍手を送ってくれていた。少しだけ微笑み、綾を見る。綾は悔しそうにあたしを見ていた。それから一言も交えないまま試合全てが終わった。
そのまま1時間後には閉会式が行われた。開会式では違う人がいた征ちゃんの隣には今、あたしがいる。そして一緒に優勝旗をもらった。その時に聞こえた、征ちゃんからのおめでとうの言葉。全中でも同じ言葉をかけてもらってはいたが、やはりIHとなるとまた別だった。閉会式が終わると洛山と一緒にそのままインタビューに移った。