第14章 高校バスケの頂点
そして2人が向き合う。互いに動きを読み合いをしていたが、大ちゃんの集中力が急激に高まった。
「これまで以上の集中力…!先読みより後の先をとることに全神経注いできた…!」
藍「そっか、手の内を互いに知り尽くしてるから読み合いは意味を無くす…」
『そういうこと。あとは大ちゃんと涼君の実力差が…っ!』
凜子「朱音?どうしたの?」
涼君はいきなり型の無い(フォームレス)シュート。もちろん大ちゃんも反応している。だけどここから涼君はボールの向きを変え、笠松さんにパスを出す。いくら大ちゃんでも普通ならこの動きには反応出来ない。けれど大ちゃんは空中で体を回転させ、ボールを止めた。
日向「あのタイミングで後出しできる人間なんていねぇ…読んでたのか!?」
『そうみたいです』
「…朱音さん…?」
あたしの掌が硬く握られていたのに気付いたテツ君が心配そうに声をかけてくれる。
茉実「じゃあ青峰君の方が読み勝ったってことなの?」
『厳密にはそうじゃないよ。あのまま1on1の状態なら涼君だって勝てたかもしれないし。あの時涼君は目線のフェイクを1つ入れたのと同時に右サイドの笠松さんを見た。だけど、大ちゃんならフェイクは入れない』
リコ「なるほどね。つまりパスは一見意表をついたように見えるけど、青峰君の頭にはパスという選択肢は無いから、次の手を教えているようなものになるわけね」
『そういう事です。大ちゃんのバスケは人を…頼るように出来ていませんから』
そして掌に込めていた力を抜いた。隣でテツ君が何とも言えない顔をしていたのが見えた。
「大丈夫です、朱音さん。今の黄瀬君なら、今の海常ならこれぐらいで潰れません。なんたって、僕たちの好敵手なんですから」
『テツ君…』
それから残り時間、海常は必死に食らいついた。誰1人諦めることなく、最後まで。大ちゃんのダンクをブロックに入った涼君が吹き飛ばされる。そしてそのまま試合終了。力が入らないのか、立つこともままならない涼君に笠松さんからの手が伸ばされた。