第14章 高校バスケの頂点
「確か無理って言ってなかったか!?」
「はい…でもそれしか勝つ方法はありません。黄瀬君がやろうとしていることは、青峰君のスタイルの模倣です」
「青峰の模倣…!?そんな、出来るのか!?」
「…そもそも黄瀬君の模倣と言うのは出来ることをやっているだけで、出来ないことは出来ません」
『つまり、飲み込みが異常に早いってことです』
リコ「なるほど。例えばNBA選手の模倣とか、自分の能力以上の動きは再現できないってことね」
木吉「だが、逆に言えばそれでもやろうとしてるってことは、出来ると信じたってことだ」
そして第2Q数秒のところで今吉さんが放った3Pが決まった。ただ放ったように見えたボールが、しかもブザービーターで決まってしまえば、海常にかかる重圧は相当な物になる。このインターバル中に立ち直れればいいんだけど…ジュースを買い出しにいった男バスの1年が抜け、あたしも時計を確認するために携帯を取り出した。新着メール1件というお知らせが届いていた。フォルダを開くと、差出人は涼君と大ちゃんだった。
"ちゃんと見とけよ"
シンプルな内容のメールは大ちゃんからだった。応援しろという彼なりの不器用なメッセージを受け取る。大丈夫、ちゃんと見てるよと心の中で大ちゃんに送った。携帯をしまおうとすると、もう1通メールが届いた。涼君からだ。
"朱音っちが前に言ってたチームバスケ、少し分かった気がするッス。それに、中学時代は勝つ試合が当たり前だったけど、勝てるかどうか分からない今の方が、やっぱり楽しいッス。だから朱音っちは見守っていてください"
あたしは涼君のいつもの笑顔を思い出す。結果がどっちに転んでも涼君はきっとまた成長出来る。あたしは返信しなかった。今ここで彼に何か言葉をかけてあげれば力になれるとは思う。だけど伝えるなら画面上じゃなく、自分の言葉でと思った。
ジュースを持った火神君たちと、後からやって来たテツ君。どうしたの?という問いかけに、黄瀬君に会ってきましたと教えてくれた。そして、心配しなくても大丈夫ですよと頼もしい言葉がかけられた。頷いたと同時に、第3Qが始まった。