第14章 高校バスケの頂点
木吉「まさか、読んでいたのか!」
『うん。涼君と大ちゃんから聞いたけど、昔から2人はよく1on1をしていたんだって。だから互いの動きは熟知している』
同じように涼君が大ちゃんをDF。左から右への切り返し(クロスオーバー)。涼君は大ちゃんの動きを呼んでみせた。だが大ちゃんは涼君の横を抜ける。
「読み合いでは黄瀬が勝ってた…はずが黄瀬の重心の変化から強引にもう1つ切り返した!?」
『大ちゃんは敏捷性(アジリティー)はもちろん、高度な技術(スキル)も持っている。一瞬で切り返すなんてことは簡単に出来る』
大ちゃんはそのままゴールへ向かう。そしてバスカンを貰いながらもシュートを決めた。止まらない、止められない。誰もがそう思っていた。
木吉「黄瀬には黄瀬のバスケがない。模倣は出来ても彼だけの武器が無い。その結果がこれか…」
『それは少し違うよ、てっちゃん。模倣して身につけるってことは学ぶってこと、つまり成長するってこと。そして、涼君にも武器はある』
テツ君がハッとしてあたしを見てくる。あたしは少しだけ笑うとコートの中に視線を戻した。海常のTOがあけたあと、涼君は大ちゃんとの勝負を避けた。
「どういうことだ?別に選択肢は1on1だけじゃねぇが、攻める気が無さすぎる。かと思えばDFには相当の力を入れてる…?」
涼君を抜き去り、シュートを狙うが、笠松さんによってチャージングを取られた。
日向「巧い!いやそれより…すげぇ度胸!あの体格差で引くどころか、ファウルもらいにぶつかるなんて!」
藍「全国屈指のPGですからね。ビビッてちゃやってられません」
それからも大ちゃんは止まらなかった。ストリートバスケを完璧に身に着けた大ちゃん。それでもあたしは、彼のチームバスケを好きにはなれない。
「…昔、教育係をしていた頃に黄瀬君が教えてくれました。黄瀬君は青峰君に憧れてバスケ部に入部したと。人には真似出来ない唯一無二のスタイルは、黄瀬君にとって憧れだったそうです」
『けれど涼君は分かっていた。憧れてしまっては大ちゃんを超えることは出来ない。以前彼は教えてくれました。大ちゃんに勝ちたいとは思うけど、心の底では負けてほしくないと思ってしまう、と』
「まさか…」