第14章 高校バスケの頂点
征ちゃんが去った後、あたしは壁に縋り安堵の息を漏らす。心臓が持たない。バスケ関係として征ちゃんを意識することで、なんとかこの場を切り抜けた。
『…やっぱり征ちゃんに触れられると揺らいじゃうな…』
あたしは誰もいない部屋に向かって一人呟く。そして翌日。朝食をとるため食堂に向かうと征ちゃんはいた。大丈夫、昨日みたいに別の意識で…
「やぁ、朱音。おはよう。昨日は眠れたか?」
『おはよう征ちゃん。あれからすぐに寝たよ』
玲央「あら、おはよう朱音ちゃん」
『あなたは確か…実渕玲央さん』
玲央「私の事知っててくれたのね。昨日征ちゃんが久しぶりに安眠することが出来たのはあなたのおかげよ。チームメイトとして礼を言うわ」
『あたしは何も…』
玲央「あなたが征ちゃんの傍にいるだけで十分なのよ。これからもよろしくね」
「玲央、喋っている暇があったら早く食べろ。この後すぐに会場に向かう。朱音もすまない」
少し照れた様子の征ちゃんに気づいた玲央さんとあたしはクスッと笑うと、それぞれ食事をすませた。それからあたしたち誠凛も準備を済ませ、体育館へと向かった。今日は同じブロックの試合が行われる。いつもは藍に任せっきりの偵察も、初めてのIHということもあり全員で行うことにした。会場に着き、試合を見る。やはり中学の時とは比べものにならないくらい皆上手かった。
「あれ?朱音っち!」
『涼君!』
「朱音っちの試合はまだなんスか?」
『2回戦からだからね。涼君の次の試合は?』
「明日ッス!それより、このまま行けば青峰っちとあたるッス。朱音っちはどっちを応援してくれるんスか?」
『んー…どっちも、かな』
「ははっ!そう言うと思ったッス。じゃあ俺行くッスわ。また」
涼君は行ってしまった。
茉実「…黄瀬君、何かおかしくない?」
藍「いつもなら、朱音っちー!ってもっとはしゃぐのに」
『多分、大ちゃんとの試合に緊張してるんだと思う。けど楽しみでもある、そんな感じだと思うよ』
凜子「相変わらず朱音は人の心に敏感だね」
『そうでもないよ。ただ一緒にいる時間が長かったり、普段感情を出さない人や逆に出しすぎてる人は分かりやすいの』
捺美「黄瀬君は絶対に最後のだね~」
『ふふっ、そうだね』