第14章 高校バスケの頂点
朱音が行ってしまった。この間の電話の時から様子がおかしい。どこか僕を避けているような気がする。僕は溜息を着くとチームに戻るため踵を返した。だが片岡によってそれは阻止された。
綾「赤司君!」
「…何だ。僕は今機嫌が悪いんだが?」
綾「そ、その…私が前に言ったこと、覚えてる?赤司君のことも、バスケも朱音には負けないって言ったこと」
「…あぁ、覚えている」
綾「あれ、私本気だから。だから、朱音との試合で私が勝ったら、私と付き合って」
何を言ってるんだ、この女は。そして何故、そんなにも満足そうな顔をして僕の目の前に立っていられるんだ。やはりこの女は僕には合わない。
「断る。僕の気持ちはどうなるんだ。それに万一にも僕が君を好きになることはあり得ない」
綾「っ!…自信、無いんだ?」
「…何だと?」
綾「朱音の事を信じてるなら、この賭けに乗っても怖くないよね?心のどこかで朱音が私に負けたら、って思ってるんじゃないの?」
「…僕がその程度の挑発に乗るとでも思ってるのか?」
綾「…もしこの賭けが上手くいかなかったら、私は赤司君から身を引くわ。もちろん朱音にも、バスケ以外では干渉しない。これでどう?」
「…君にしてはいい交換条件だな。いいだろう、乗ってやる。ただし僕が君と付き合うという事はあり得ない。朱音が負けるなんて想像がつかないからな」
悔しそうに握り拳を作る片岡を置いて、その場を後にした。もうすぐ涼太のチームが試合をする。それを見に行くために、ギャラリーへと向かった。その途中で敦に会う。
「あ、赤ちん~」
「…敦、まだお菓子を食べる習慣は抜けていないようだな」
「抜かねーしぃ。あ、峰ちんだ~」
「あ?赤司に紫原じゃねーか」
「あれ?本当だ!赤司君、むっくん久しぶり!きーちゃんの試合見るの?隣座ってもいい?」
久しぶりに中学時代のかつての仲間に会う。涼太は試合中でいないから仕方ないにしろ、この懐かしい場に真太郎とテツヤがいないことは素直に寂しかった。けれど、この懐かしい感覚に身を委ねる。あぁ、僕はあの時の時間を楽しんでいたんだと。