第13章 それぞれの思い
『…あたしもいること、忘れないでね?』
「「…忘れて(た)(ました)」」
『…やっぱり。ま、話がついたなら良かった。心配する必要も無かったってわけね』
「若槻、IHで日本一になって来い。誠凛高校の特攻隊長としてな!」
『クスっ…特攻隊長か。面白そう!任せといて、必ず優勝してみせるから』
「応援してます」
『ありがとう、テツ君』
それから少しだけバスケをして帰った。その帰り道、新しいテツ君のスタイルについて話した。どうやらまだ案は無いらしい。けれど、冬までに見つけるという頼もしい言葉を聞いた。
「とっとと強くなりやがれ。そんで冬に見せつけろ。新生、黒子のバスケを」
テツ君と火神君は拳をぶつけ合った。テツ君の正真正銘、新しい光。昔はその光を際立たせることしか求めていなかったテツ君が、今はその光に追いつこうと必死になっている。
あたしは最近交換したばかりのてっちゃんのアドレスにメールを送る。テツ君は殻を破ったよ、火神君とも大丈夫そうだよ、と。そしてすぐに返事が返ってきた。それなら良かったという文字に、どういう理由でついているか分からない、おにぎりの絵文字。クスリと笑うと、テツ君と火神君に変な眼で見られた。あたしは2人の背中を押すと、少しだけ走った。ただ、意味も無く。
それから日にちはあっという間に過ぎ、合宿に向かう男バスより1日だけ早く、あたしたちはIHに向けて開催地へと出発した。