第13章 それぞれの思い
体育館に着くと、練習しているはずの女バスと男バスの動きは止まっていて、一か所に集まっている視線をたどると火神君とてっちゃんがいた。
『ちょ、どうしたの?練習しなくて勝てる相手じゃないよ、IHは。ってあたしも遅れたけど…』
藍「そんなことより止めなきゃ!木吉さんって先輩と火神君が…!」
あ、藍ってばIHをそんなこと呼ばわりしたな…と思いつつ、火神君とてっちゃんを見る。藍から事情を聞くとどうやらてっちゃんがユニフォームをかけて火神君に1on1を申し込んだみたいだ。あたしは溜息をつくと、リコさんに話しかける。
『リコさん、やらせてあげてください。てっちゃんは…木吉さんは考えも無しに動くほど馬鹿じゃないですから。…バスケに関してだけですけど』
リコ「朱音ちゃん、鉄平と知り合いなの?」
『兄繋がりです。それより…』
リコ「いいわ。私もそう思ってたところだから…」
それから2人はゲームを始めた。1年間入院していたはずのてっちゃんの動きは、ブランクを感じさせないほどの動きだったが、やはり動きはかなり堅い。それに押してるのは火神君だ。てっちゃんの動きがおかしい。そして気付いたあたしは溜息。
日向「それにしても木吉の奴、動きがおかしいんだが…」
近くにいた日向先輩に尋ねられあたしはある部分を指さす。それに気付いた先輩は同じように溜息をついた。と、同時に火神君がジャンプ中に回転し、裏からダンクを決めた。
木吉「…ふぃー。参った!俺の負けだ。約束通りスタメンは君だ」
火神君は先に上がるとだけ告げ、先に上がっていった。そしててっちゃんはリコ先輩にハリセンでシバかれてたけど。
木吉「しょうがねぇだろ。ブランクなんて言い訳になんねーし、これが実力だ」
日向「実力だ、じゃねーよ。ボケすぎだ、足元見ろ!練習中から何か変だと思ったんだよ。お前それ上履きじゃねーかダァホ!…ったく。まさかわざと負けたんじゃねーだろーな」
木吉「…いっけね!」
「「「「「素かい!!」」」」」
てっちゃんの考えることは相変わらず分からない。けれど、てっちゃんの大きな手があたしの頭に乗せられる。
木吉「心配すんな、大丈夫だ」
『てっちゃん…そうだね。よし、あたしたちも練習に戻るよ!』
あたしはいろいろ首を突っ込みすぎだ。今あたしがやるべき事は、皆とIHを優勝することだから。