第13章 それぞれの思い
1週間後、たまたま日直になったあたしは、たまたまやっちゃんから会議に使う資料のホッチキス止めを命じられた。IHまで練習時間が惜しい惜しいって言うこの時期に…やっちゃんはあたしの頼まれたら断れない性格を知ってるんだ、絶対。その忙しい中でも花帆は手伝ってくれた。そして今、花帆と2人で空き教室をふんだんに使い、何百枚もある資料を12枚ずつの束にして止めていく。
『ねぇ、花帆。相談があるんだけど』
花帆「朱音があたしに?珍しいね、どうしたの?」
以前聞こうと思ってなかなか聞けなかったことを花帆に聞くことにした。あたしは征ちゃんのことをざっと説明した。そして、中学時代最後にあった時に抱きしめられた事、この前久しぶりに電話がかかって来たときにその時に同じようにドキドキしたこと、最近の電話でも同じようになったこと、その度に綾の顔が思い出されたこと、そして綾の征ちゃんへの思いを聞いたときに少し胸が痛くなったこと。花帆は黙って聞いてくれた。そして話し終えたあたしに盛大に溜息をついてみせた。
花帆「あのね、朱音。それは朱音がその人の事を好きって事なんだよ?」
『?それはもちろん好きだよ?』
花帆「…はぁ。朱音がここまで鈍感だったとは」
『?』
花帆「朱音、今まで人に恋をしたことがある?」
『こここ恋!?そんなの無いに決まってんじゃん!まだ高校生になったばかりだよ!?』
花帆「…これじゃその征ちゃんって子が可愛そうね…あ、黒子君もか」
『花帆?』
花帆の言葉は聞き取れなかった。
花帆「何でもないわ。これは本人から聞くべきだからね。それより、朱音。朱音はその人に恋をしてるのよ」
『…え?』
花帆「その綾って子に征ちゃんって子への気持ちを教えてもらった時、胸が痛んだのは嫉妬してるから。電話の時だって朱音はドキドキしてるの、ときめいてるのよ!」
『そんな大げさな…』
花帆「大げさなモノなの!人を好きになるってのはね、今までの感情以外の大きな気持ちになるのよ!」
『花帆…けどもしそうだとしても、あたしにはどうしようもないよ』
花帆「…何で?」
『だって征ちゃんには綾がいるもの。綾の好きな人を奪うなんて出来ないよ』
花帆「馬鹿朱音!何よそれ!」