第13章 それぞれの思い
~13.それぞれの思い~
翌日。学校に着くと一言も言葉を交わしていないテツ君と火神君の姿があった。いつも話していたわけではないが、今日はまた一段と雰囲気が悪い。
宗助「おっす、朱音!IH出場おめでとう!ところで、火神と黒子に何かあったのか?朝から挨拶もしてねーんだぜ?」
花帆「朱音おはよ!やっぱ朱音は凄いね!って言うか宗助の言う通り、あの二人どうにかしてよ~」
『おはよ、花帆、宗君。大丈夫、二人ともちゃんと考えてるから。花帆たちはいつも通り接してあげて?』
とは言ったものの…火神君はもちろんのこと、テツ君も話しかけるなオーラが凄いからなぁ…さて、まずは火神君からかな。
『おはよ、火神君。足どうだった?』
「若槻…筋(すじ)、痛めてるんだとよ。2週間は安静らしい」
『2週間か…思ったよりも短くて済んだんだね』
「監督に聞いた。お前が気付いてくれなかったらもっと長引いてたはずだって。その…さんきゅ、な」
花帆「おおおおおお!火神君が照れてる…」
宗助「レアだな!火神のありがとうもレアだ!」
「~~~!てめーらぁぁぁ!」
火神君は大丈夫そうだ。多分、火神君が悩んでいる問題は自分の実力について。今のままじゃキセキの世代と差がありすぎる。それより深刻なのはテツ君。テツ君の悩みの種は、きっとテツ君のスタイルそのものについて。大ちゃんには全く通用しなかったのだ。
『おはよ、テツ君』
「…おはようございます、朱音さん」
それだけ言うと、テツ君はいつものように本に目を落とした。こればかりはあたしにもどうしようも出来ない。それほどまでにテツ君は特殊なのだ。
それっきりテツ君とは話さなかった。その日の部活。IHに向けて練習を行っている女バスの反対側の男バスコートでは、リコさんに集められて何やら話していた。コートの外から指示を出していたあたしは、その会話に耳を傾けた。その内容は、冬の選抜大会、通称ウィンターカップについて。今日の練習は皆気持ちが全然入っていなかったから、新たな目標を見せることで、気持ちに喝を入れようとしているのだ。そして聞こえた。鉄平が帰ってくる、と。