第12章 IH予選開始!緑と青と…
控室と戻りリコさんから栄養補給にと出されたレモンの蜂蜜漬けをみて、あたしは驚愕した。たくさんの蜂蜜の中に、レモンが丸ごと入っていた。
日向「切ってって!切ってって言ってるじゃんいつも!」
リコ「ちゃんと洗ったから皮ごといけると…」
伊月「水戸部、ある!?」
水戸部先輩がスッと差し出した本当のレモンの蜂蜜漬けを食べながら、日向先輩に聞かれた。
日向「そう言えば若槻。何やら青峰と深刻そうだったが、どうしたんだ?」
『…今の青峰君をあんな風にしてしまったのはあたしが原因です。彼が欲しているモノに、女のあたしがなってしまったんです』
中2のあの合宿であたしが大ちゃんの誘いを受けなければこんなことにはならなかったかも知れないのに。
「朱音さんのせいではありません。いずれはこうなっていたことです。そして監督、後半もこのまま出してもらえませんか」
日向「確かに青峰いて黒子抜きはきちーけど…てか行けんのかよ?1試合フルにはミスディレクションは続かないんだろ?」
伊月「…俺は反対だ。イーグルアイで見てたけどもう随分効果が落ちてる。一度下がるべきだ」
「出来ます…いえ、やります。どうしても青峰君に勝ちたいんです」
テツ君の眼は真剣だった。けどこんなのはテツ君じゃない。あたしが立ち上がろうとしたとき、隣にいる火神君から溜息が聞こえた。そしてリコさんにさっきの丸ごとレモンを要求した。
「いーから食って引っ込めよ馬鹿。…バスケは1人でやりものじゃねーって言ったのはお前だろ!任せとけ」
リコ「…よし!後半黒子君は1度下げるわ!第4Qに勝負よ!とは言え取り返しがつかなくなったら意味がない。危なくなったらいつでも出れるよう準備しててね。レモンでも食べて」
「え」
あのレモンをもう一度…と思っているテツ君の顔には安心感のようなモノが現れていた。火神君のおかげで頭が冷えたテツ君。だけど問題は山積だった。日向先輩達に指示が終わり、火神君に最も重要なことを伝える。
『火神君、さっきの青峰君の動きだけど、彼はまだ本気を見せていないっていうか…あれは遅すぎる方なの。あたしも才能が開花してからの青峰君の本気は見たことないけど、火神君の想像の倍以上早いと思っていい。とにかく気を付けて』
「…ハッ、望むところだよ…」
そうして第3Qが始まった。