第12章 IH予選開始！緑と青と…

コートに現れた大ちゃんに、あたしたちは固まった。このインターバル中にずっとアップをしていたのか、大ちゃんの体はきっちり温まっており、集中力も高まっていた。

リコ「後半はまず間違いなくほとんど彼でしょうね…」

リコさんの考えは当たっている。今の大ちゃんを桐皇が使わないわけがない。大ちゃんはいつも凄まじいキレを見せ、瞬時に火神君を交わす。ヘルプに入った水戸部先輩と土田先輩の前で急停止し後ろへ飛びシュート、つまりフェイダウェイ。大ちゃんのあのスピードからフェイダウェイが来るとは思えないだろう。

リコ「早い…これが青峰大輝…！」

『ただ単に早いだけじゃないんです。運動において速さとは最高速度だけではありません。0からMAXへの加速力と、MAXから0への減速力、つまり敏捷性（アジリティー）。青峰君はそれがずば抜けて高いんです』

けどそれにも火神君は追いついていた。抜かれていたのにも関わらず、追いついた…！？火神君の手はボールに触れることなく空を切ったが、あたしには追いついたことの方が驚きだった。そして誠凛の速攻。それにも大ちゃんは追いつくが、あたしには気になったことが一つ。

『今の踏み込み位置、フリースローラインだった…まさかレーンアップでもするつもりだったの…！？』

それに気づいていた大ちゃんも笑う。これは…

『まずいです。こうなった以上、もう青峰君は止まらないかもしれません…！』

リコ「…どういう事？」

同じように気付いたテツ君の頬を冷や汗が流れる。その不安を確定付けるように大ちゃんの言葉がコートに響く。

「…やめた！やっぱ性にあわねーわ。生真面目なバスケは」

それからの大ちゃんは止まらなかった。型にはまらないトリッキーな動き。変幻自在なストリートバスケのスタイル。ブロックに３人ついてもゴールの後ろからシュートを入れる。体勢を崩されても片手でシュートを投げるように放つ。高さで止めてきた火神君を相手に、状態を寝かせながらほぼ真上に放ったシュートも入る。とにかくもう止まらない。

リコ「黒子君、朱音ちゃん、これって昔から…？」

「いえ、ここまでの青峰君は見たことないです」

『あたしもです。前にやった時もストリート特有の動きは見せてたんですが、キレが何倍も増してる…』

これがあの、青峰大輝なの…