第12章 IH予選開始!緑と青と…
『っ!リコさん、急いで火神君を交代させてください!』
リコ「えっ?…ウソ…緊急事態だわ。小金井君、至急アップよろしく!」
小金井先輩は急いでアップを終えると、火神君と代わった。そして火神君をベンチに座らせる。あたしはタオルとドリンクを渡して隣に座った。
リコ「痛めた足、完治してないわね?」
「…大丈夫ッスよ!まだ全然…」
リコ「病院でも異常なかったし、別に出るなとは言わないわ。とにかくテーピングするわよ!バッシュ脱いで!朱音ちゃん、その間の指揮は任せるわ」
『…分かりました』
と言っても火神君の抜けた穴は大きい。特にインサイド。どうしてもリバウンドが取れなかった。誠凛もテツ君を中心に得点を重ねているにしても、徐々に点差が開き始めた。
『伊月先輩、4番から外れないでください!日向先輩はもう少し落ち着いて!』
リコ「出来たわ!とりあえずこの試合はこれで問題ないはず。行っていいわよ。朱音ちゃんもありがとう」
あたしは声をかけることしか出来なかった自分に悔しさが溜まった。同じコートに立てない歯がゆさに。
リコ「…すまないわね。本当は万全でない選手を出すなんてやりたくないけど、火神君がいないと勝てないわ。全員一丸のバスケって言ったけど、そもそもそれはある人が教えてくれたスタイルよ。私だけの力じゃまだ未完成で皆の力を引き出しきれてない…自分の無力さに腹が立つわ…」
「え、と…誰?練習メニュー作ってスカウティングして、ベンチで指示だしてマッサージにテーピング…むしろちょっと仕事しすぎ。試合中くらい、ドーンと構えてくんねーと!つかそもそもすまないで送り出されてもテンション上がんねーから…です」
あたしとリコさんは火神君の言葉に顔を見合わせて微笑む。
リコ「…生意気言ってくれるわね!行って来い!」
「ウス!」
「そーそー張り切ってくれよ。少しでも俺を楽しませられるようにさ」
気合十分に返事をした火神君の肩を組んでいきなり現れたのは、大ちゃんだった。