第12章 IH予選開始!緑と青と…
お兄ちゃんのマッサージを受け、歩けるようになった火神君と昼食をとる。練習開始時間は過ぎているけど、今の火神君は放っておけなかった。
「…青峰とやって俺は負けた」
『火神君…』
「1on1で負けたのは別に初めてじゃねぇ。黄瀬と初めてやった時だって似たようなことはあった…けどこんな感情は初めてなんだ」
勝てる気がしねぇ…と呟いた火神君に、あたしは何も言えなかった。大ちゃんの才能が開花しバスケに対する思いが変わったのは中2の全中前。大好きだったはずのバスケは、ただの暇つぶしとなった。
『…確かに大ちゃんは強い。けど火神君は1人で戦う訳じゃないでしょ?テツ君がいるじゃない。それに先輩達も』
「若槻…そうだな。別に俺は1人で戦うわけじゃねーよな」
少しだけ元気になった火神君と共に体育館へと向かった。もう皆は練習を始めていた。火神君がバスケをしたことはお兄ちゃんのマッサージも意味なく、リコさんにばれてしまった。リコさんにはばれるとは思っていたけど。今日は見学と告げられた火神君は、同時に逆立ちで保健室まで言って湿布を貰ってくるように言われ、体育館から消えた。また、それを追うようにテツ君も。火神君のことはテツ君に任せるのが一番だ。
リコ「それより、決勝リーグの出場校が揃ったわ。はい、朱音ちゃん。これが女子の分よ」
『ありがとうございます』
あたしはリコさんからもらった決勝リーグ表を皆に見せる。
『やっぱり予想通りの相手だよ。前から言ってるけど、実力さえ出し切れば勝てるから。あくまでも自分たちが上なんて思わないこと。それに最終日の試合だけは、各自最高のコンディションで臨むこと』
「「「「「はい!」」」」」
あたしたちは心配はしていなかった。決勝リーグには、正直脅威になるようなチームはいない。それよりも気になるのは、男バスの方だった。
『あの、リコさん。男子の方はどうだったんですか?』
リコ「…桃井って子と青峰君が行ったのはどこの桐皇学園よね」
藍「…はい」
リコ「1回戦の相手はその桐皇よ。過去の実績は殆ど無いけど、最近スカウトに力を入れるようになって全国から有望の選手を集めてるそうよ」
藍「ここ数年で急激に力をつけてきてるチームです。特に今年の顔ぶれは、秀徳と比べて何ら遜色はありません」