第3章 接触
早瀬「それにしてもホント若槻さんはすげぇな」
『えーまたー?』
いくら褒めても何も出ないぞ!あ、ポッケに飴ちゃん発見。…飴ちゃんが出てくるぞ!
栗田「あの赤司ってやつ。なんかオーラ違うもんな。いや、ある意味若槻さんも違うオーラだけど、けどあいつと違って近寄りやすいし」
『あー、赤司君はね、確かに大変そうだけど、慣れたらきっと心開いてくれるよ。彼には今、休まる場所がないだけだと思うから』
きっとそう。彼の2色の瞳からは確かに凡人が、ケッ!みたいなとこもあったけど、本当に心を許した人、いつまでも一緒に歩いていたいって人がいるはず。そういう瞳だった。そういう人に会うことは確かに少ないけど、出会ってしまえば彼は一生をかけてそれを大事に守っていくんだろう。
『それにしても藍遅いね。あ、来た。…ねえ、何か凄い顔で走って来てない?凄いくらい満面の笑みで走って来てない?』
早瀬栗田「「…確かに。どうする?」」
『どうするって…そんなの逃げるに決まってるじゃん!』
ワーっと3人で逃げるがなんかもうあれ藍じゃないよ。だって彼女、運動できないもん。走るとかもう未知の世界だったはずなのに!対してあたしは自分で言うけど結構速い。部内では一番だし、この間陸上部の友達にも勝った。早瀬君と栗田君はさすが運動部、さすが男子ってことで早い。とにかくあたしたちは早い。はずなんだけど…
『どーして距離近くなってるの!?』
早瀬「嫌だぁぁぁ!超こえーよ!速さもだけど顔が一番こえーよ!」
栗田「あれに捕まったら死ぬんだ、あれに捕まったら死ぬんだ、あれに…」
『栗田ぁぁぁ!かむばぁぁぁっく!』
あたしたちの必死の努力も虚しく、学校の一歩手前で捕まってしまった。うん、あたしだけ。そして今は息を整えながら満面の笑みで抱き着いてくる藍を刺激しない程度に無視を決め込んでいる。ごめん、早瀬くん栗田くん。どうやらあたしが巻き込んだみたいだ。二人は魂の抜けたように体を引きずり、お疲れ。部活頑張ろうな、フッ…みたいにそれぞれの活動場所へと向かっていった。もう一度心のなかで二人にごめんと謝ると、未だにじゃれてくる藍を引きずって体育館を目指した。