第12章 IH予選開始!緑と青と…
それからはお好み焼きを空中でひっくり返そうとする高尾君が心配でテツ君たちの会話は聞けなかった。だけど、テツ君たちの周りには不穏な空気が漂う。それを打ち破ったのは、高尾君の手元にあったお好み焼きが宙を舞い、真ちゃんの頭の上に落ちた瞬間だった。怒りに怒った真ちゃんは高尾君に同じようにお好み焼きを振りかぶった。ギリギリの所で避けれたあたしは、そのままテツ君たちのいるテーブルへ行った。
「火神君の言う通りです。今日試合をして思いました。つまらなかったら、緑間君はあんなに上手くなりません。そうですよね、朱音さん」
話の筋が分からなかったけど、テツ君の言いたいことは分かる。真ちゃんはバスケが大好きだ。
『うん、そうだね!』
それからあたしたちは皆でワイワイ楽しんだ。鈴城の皆とテツ君と涼君、真ちゃんがいるこの空間は、まだ皆がバスケに純粋であった時のように楽しかった。バスケでも同じ思いになれたらいいのに、と願って。
時間もあっという間に過ぎ、そろそろ解散しようとなった。スッと立ち上がった真ちゃんが火神君に伝える。大ちゃんのことを。火神君はよく分からないと言った様子で、テツ君に大ちゃんが強いかどうか尋ねる。
「…強いです…ただあの人のバスケは好きじゃないです」
テツ君は昔を思い出すかのように表情を暗くした。それを見ていた涼君、真ちゃんと目が合う。あたしは首を横に振って見せた。それを見た真ちゃんは荷物を手に取り、扉に向かって歩き出した。
「…フン、まあ精々頑張るのだよ」
「緑間君!また、やりましょう」
「…当たり前だ。次は勝つ!じゃあな、朱音。また暇があったら連絡するのだよ」
『うん。またね、真ちゃん』
残されたあたしたちの間には居心地の良い空気が流れていた。
「緑間っちも素直じゃないッスね~。じゃあ俺達もそろそろ帰るッス。今度時間があったら遊びに行こう、朱音っち!」
笠松「何言ってんだ、黄瀬!そんな暇があったら練習しやがれ!シバくぞ!…じゃあな、若槻///」
『時間があったらね。笠松さんも、また』
顔を真っ赤にさせた笠松さんと、物凄い笑顔で手を振り続ける涼君を見送ったあと、あたしたちも店を後にした。あんなに降っていた雨は、皆の心が晴れたことを示すかのように雲1つ存在していなかった。