第12章 IH予選開始!緑と青と…
日向先輩の打った3Pは綺麗な弧を描いて、リングに触れることなくネットに吸い込まれていった。会場にいる誰もが誠凛の勝ちを確定していく中、あたしは立ち上がった。
『まだ終わってない!気を抜いちゃだめ!』
あたしの声は聞こえていないだろう。それくらい誠凛の顔にはホッとした表情があった。諦めていなかった秀徳は真ちゃんに最後を託す。再び取り戻された緊張感に会場が静まる。
「なぜ俺が遠くから決めることにこだわるか教えてやろう。3点だからというだけなはずがないのだよ。バスケにおいて僅差の接戦の時、残り数秒の逆転は珍しくはない…が、場合によっては苦し紛れのシュートでそれが起きる時もある。そんなマグレを俺は許さない。だから必ずブザービーターでとどめを刺す、それが人事を尽くすという事だ」
残り3秒。ここで止めなきゃ誠凛は負ける。お願い、火神君と心の中で唱える。それに応えるかのように、火神君は飛んでみせた。だけど、真ちゃんはシュート打たず一度戻した。
「だろうな。信じていたのだよ。例え限界でもお前はそれを越えて飛ぶと」
茉実「この場面でフェイク!?」
笠松「百戦錬磨は黒子だけじゃねぇ!」
『テツ君!お願い!』
コートの中を食い入るように見ると、そこに彼の姿はあった。真ちゃんの後ろに。
「僕も信じてました。火神君なら飛べると。そしてそれを信じた緑間君が1度ボールを下げると」
テツ君はそのまま真ちゃんのボールを弾いた。シュートモーションに入っていた真ちゃんの手から、ボールが消えた。そしてそのまま試合の終了を告げる笛が鳴る。
『テツ君…真ちゃん…お疲れ様』
あたしは溢れ出しそうな涙をグッとこらえ、力いっぱいに両チームへと拍手を送った。
「…次は決勝リーフッスか。ってことは青峰っちとやるのも遠くないッスね。あの2人にはちょっと因縁めいた試合になりそうッス」
それだけ告げると、涼君と笠松さんは帰っていった。今と昔のテツ君の光、火神君と大ちゃん。テツ君は大ちゃんを相手にどう戦うのかな。
茉実「朱音、緑間君のとこ行かなくていいの?」
『あ、うん。言ってくる。そんなに遅くならないと思うから、少し待ってて』
あたしは真ちゃんが出ていった方向と、真ちゃんの行きそうなところを考えて、外に向かった。