第12章 IH予選開始!緑と青と…
数分その場に居座り、気持ちが落ち着いたあたしは、何もなかったかのように皆の場所に戻った。それから皆で話をした。それはもう様々な話を。主に涼君が自慢してそれを皆でツッコむという物だったけど。そしてあっという間に3時間は過ぎていった。
藍「あ、そう言えば火神君って初めて緑間君にあった時に、いかにも名前覚えなさそうだからって、緑間君の掌に自分の名前書いたらしいよ」
「はぁー?何やってるんスか、火神っちは…」
凜子「どうしようもない馬鹿だったんだね…」
茉実「緑間君が名前忘れるとか有り得ないのに」
笠松「そうなのか?」
優希「緑間君は頭良いですからね」
あたしたちが火神君について話している途中で、秀徳、誠凛両チームがフロアに入った。
笠松「誠凛が王者連続撃破の奇跡を起こすか、秀徳が順当に王者の椅子を守るか…」
泣いても笑ってもこの試合が終われば勝者が決まる。そして今、ティップオフ!
笠松「まずは誠凛ボールか…」
「ここは一本大事にいきたいッスね、誠凛」
『そうじゃないよ。正直誠凛と秀徳じゃレベルが違いすぎる。のんびりやってる場合じゃない。だから…』
テツ君のパスを受け、火神君がアリウープを狙う。が、それは真ちゃんによってブロックされる。秀徳のOFに入り、5番がレイアップを決めようとするが、日向先輩によってそれも阻止。それからも何回も攻守が入れ替わって1分強。未だ両チームとも無得点だった。
バスケットの試合は10分×4Qと細かく区切られている。つまり最低3回は流れが切れて変わるポイントが存在する。しかしそれは一度流れを持って行かれるとそのQ中に戻すのは困難だ。
笠松「このままいくと第1Qはおそらく、先制点を取った方が獲る」
その直後、リバウンドを取った秀徳の4番が速攻を仕掛ける。それを10番が受け取り、振り返らずに真ちゃんにパスを出す。そしてそのまま3Pを打つ。真ちゃんのシュートは相変わらず滞空時間が長い。この長さは体感した人にしか分からない。精神がやられてしまう。その上に均衡が崩れてしまったのだ。そして流れも持って行かれた。誠凛に圧し掛かる負担は相当なものだろう。だけど、それは解消される。テツ君の回転式長距離パスによってコートを通過したボールは火神君の手に渡り、そのままダンクを決めた。これで流れはまだ、どっちにも付いていない。