第11章 海常高校のモデル
そこにはルールも守らず、好き勝手にストリートバスケをする男たちの姿があった。そして終いには暴力。殴りこもうと意気込んだあたしより先に、テツ君が動いていた。
「どう見ても卑怯です」
テツ君は昔からバスケにかける思いは誠実で、このような卑怯なバスケを許さなかった。それはあたしも同じ。
『あたしが相手してあげるからさ、かかってきなさいよ』
不良「あ!?って…君可愛いね!バスケなんかよりもさ、どっか遊びに行こうぜ!」
「なーに言ってるんスか、彼女はダメッスよ。そんなことより、俺らも混ざっていいッスか?」
「つーかいきなり何かましてんだテメー」
あたしを庇うように現れた涼君、そしてテツ君の後ろに立った火神君。あたしはさっきの一言で余計にイライラしていた。
『やだ。あたしもやる。バスケをなんか呼ばわりされて黙ってられないもん』
「はぁ…若槻って変な所で子供なんだな。それにお前スカートじゃねぇか。そんなんでどうやってやるつもりだ?」
「そーッスよ。それにこいつら相手に朱音っちが出るほどでもないッス。そこで大人しく見ていてくださいッス」
涼君と火神君に強制的に座らされて、渋々了承した。言うまでも無くテツ君チームが圧倒した。そこには昔のように楽しそうにプレイするテツ君と涼君の姿があった。あたしは懐かしく嬉しくも、どこか複雑な気分でいた。もうこの時のように楽しそうにバスケをする彼らを見ることは出来ないであろうと。
「じゃっ、俺はそろそろ行くッスわ。最後に黒子っちと一緒にプレイも出来たしね!あ、朱音っち。いろいろありがとうッス。また連絡するから!あと火神っちにもリベンジ忘れてねッスよ!予選で負けんなよ!」
「火神っち!?」
「黄瀬君は認めた人にはっちを付けます」
「やだけど!?」
涼君は嵐のように帰っていった。そしてすぐにリコさんたちが来た。まだ声が届かない距離でテツ君が問う。さっきの話を聞いていたかどうか。
「いつも光と共にある。それがお前のバスケだろ」
その瞬間、火神君なら大丈夫だと思ってしまった。それほどまでにその言葉には力があった。信じれる光。影はまた、光に出会えたんだと。