第11章 海常高校のモデル
それからあたしたちはいろいろな話をして帰った。中学時代のこと、高校でのこと、そしてバスケのこと。あまりにも楽しそうに話す涼君を見て、あたしも凄く楽しかった。その時。
「黒子っち…ちょうどよかった。ちょっと話さねぇスか」
『あ、じゃああたしはこれで…』
「朱音っちも一緒に来てほしいッス」
さっきの明るい涼君の姿は消え、深刻そうなものへと変わった。そしてバスケのコートがある公園へと移動した。そして真ちゃんに会ったと教えてくれた。あたしたちも真ちゃんには会ってたから、反応したのはテツ君だけだったけど。
「ま、今日は見に来ただけらしースわ。それより…黒子っちにフラれ試合も負けて。高校生活いきなり踏んだり蹴ったりスわ~。ダメ元でも一応マジだったんスよー!」
「…すみません」
「冗談ッスよ。それに試合のことも朱音っちに慰めてもらったし。そんなことより話したかったのは、理由を聞きたかったんスよ。なんで全中の決勝が終わった途端姿を消したんスか?」
テツ君はあたしに以前話してくれたように涼君に伝えた。帝光のバスケに欠落した何か。それでも涼君のスポーツは勝ってこそ、という考えも分かる。あたしたちは勝つために努力をしているのであり、負けてばかりではつまらない。
「僕はあの頃バスケが嫌いだった」
『…え?』
「…黙っていてすみません。ボールの感触、バッシュのスキール音、ネットをくぐる音。ただでさえ好きで始めたバスケなのに」
だから火神君のことを心から尊敬しているという。確かに火神君のバスケにかける情熱は凄いと思う。
「…やっぱ分かんねッスわ。けど1つ言えるのは…黒子っちが火神を買う理由がバスケへの姿勢だとしたら、黒子っちと火神はいつか、決別するッスよ」
確かに火神君はオンリーワンの才能を秘めている。キセキの世代の皆と同じような、唯一無二のスタイルを。今はただ我武者羅に戦うことを楽しんでいるだけだけど、その才能が開花されたとき、彼らのようになってしまうんじゃないかという不安。そしてチームから浮く日がいつか来るのではないかという不安もあった。
「テメー何フラフラ消えてんだよっ!」
その火神君が現れて、テツ君の背中を叩いた。聞かれたんじゃないかとも思ったけど、罵声によって意識はそちらを向いた。