第11章 海常高校のモデル
『あの…涼君…じゃなくて黄瀬君は?』
笠松「あぁ、あいつならどうしても顔見せられないってどっか行っちまったよ」
『そうですか…あの、リコさん。茉実たちのこと、お願いしてもいいですか?一緒に連れて帰ってくれればいいので』
リコ「いいけど…朱音ちゃんはどうするの?」
『黄瀬君と少し話してきます。藍、後はお願いね』
あたしが笠松さんから涼君がいるであろう場所を聞いて向かった。そこにはタオルを頭にかぶせ、空を見ている涼君がいた。涼君、と声をかけると、泣きそうな顔で朱音っち…とつぶやいた。
「…見に来てたんスか。かっこ悪い所見せちゃったッスね…」
『かっこ悪くなんかないよ。むしろかっこよかった』
「負けたら何もかっこよくなんかないッスよ」
『…涼君、負けたら弱いってことじゃないんだよ?本当に弱いってのはね、負けてそこから立ち上がろうとしなかった人、そこで終わっちゃうことなんだよ。涼君も、そうなの?』
「俺は!…俺は次こそ負けないッス。黒子っちにも、火神っちにも」
『なら、それで十分じゃない。落ち込むことも悪いとは言わないけど、やっぱり涼君は突っ走ってる方が似合ってるよ』
涼君の眼には次第に力が戻ってきた。それもそうッスね、と笑顔になると、スッと立ち上がった。
「ありがとうッス、朱音っち。朱音がいてくれて本当に良かったッス」
『そんな大げさだよ。さ、海常の皆さんも心配してるから、もう戻らなきゃ』
「あ、忘れてたッス…朱音っち、俺が着替えるまで待ってて!そんで一緒に帰ろう!」
あたしの返事も聞かずに、涼君は体育館へと走って行ってしまった。あたしは少し笑うと、涼君を待つべく、その場に座り込んだ。そして暫くして戻ってきた涼君と共に、海常高校を後にした。