第11章 海常高校のモデル
テツ君がコートに戻ってからは点差は縮まる一方だった。ミスディレクションの効果を取り戻したテツ君に、海常は必死に食らいつくしかなかった。それでも、そう簡単に上手くいくとは思えない。だって相手はあの涼君だから。
茉実「黄瀬君って負けず嫌いだよね。ってことは…」
『うん。涼君はもう一段階化けるよ』
同点になったところで涼君の雰囲気が変わった。いつものお茶らけたモノではなく、本気のモノに。テツ君のバックチップも見切り、もう涼君は止まらなかった。誠凛も負けずと点を入れていく。ここからは点の取り合い(ランガン)勝負だった。
あたしの視界に、懐かしい緑色の頭の男の子が入った。一瞬驚いたが、あのテーピング、その手に収められたラッキーアイテムであろう謎のカエルの置物、そして眼鏡。間違いなく真ちゃんだった。
『真ちゃん!どうしてここに…』
「?…朱音か!俺は試合を見に来ただけなのだよ。朱音は…そうか、黒子と同じ誠凛高校に入ったのだな。それに鈴城中も全員いるか」
藍「そういう緑間君の制服…秀徳高校?」
「あぁ。聞きたいことは山ほどあるが、今は試合を見たいのだよ。どういう状況なんだ?」
あたしたちは今までの経過を真ちゃんに伝えた。そして残り15秒。得点は同点。海常のPGで主将の笠松さんがシュートモーションに入る。マッチアップしている日向先輩は足に相当の疲労が溜まっていて、飛ぶことができなかった。けどそれは火神君によって防がれた。DFとOFが入れ替わり、火神君とテツ君のツーメンになった。涼君の前で火神君からテツ君にパスが渡る。
凜子「?この状況だったらテツ君は火神君にパスを渡すしかないんだよね?それってパスコースを教えてるもんじゃないの?」
凜子の言う通りだった。だけどテツ君が策も無しにこんなことをやるとは思えない。するとテツ君はゴールに向かってボールを投げた。でもこの軌道はゴールを狙って投げられたモノじゃない。