第3章 接触
既に人が入っている教室の前まで行くと、案の定話し声が聞こえた。その中に一つ、心地良い声を聴いてしまい、手が止まった。
谷山「…?赤司さん?」
「あぁ、すまない。行こうか」
副会長の谷山に促され中に入る。予想していた通り4つの視線が僕に集まる。人の視線が集まることは僕にとっては苦ではない。それが当たり前だからだ。
「遅れてすまない。それじゃあ始めようか」
ふと見渡すと見覚えのある顔が一人。彼女は…そうか。やはり彼女も僕と同じ人間だったのか。自然と緩む口元を隠すように要件を伝える。
「とりあえず今日は顔合わせということだったね。ではこちらから挨拶を行っても構わないか?」
まだ誰が会長かなんて紹介されていないけど、僕には分かる。彼女は人に遣えるような器ではない。
『ええ。構いません』
なるほど。僕が気に入った声はやはり君のモノだったか。
「帝光中生徒会長の赤司征十郎だ。よろしく」
それから、と副会長の谷山、書記の畑中、会計の橋本と挨拶を済ませる。
『わざわざご丁寧にありがとうございます。それではこちらも。鈴城中生徒会長、若槻朱音です。どうぞよろしく』
早瀬「副会長の早瀬翔太ッス。ども」
藍「書記の立花藍です。朱音に変な眼向けないでくださいね。よろしく」
栗田「会計の栗田彰浩です。よろしく」
…驚いた。彼女の周りにいる人間がこんな軽薄な人種なのか、と。最後の栗田は多少なりとも、早瀬と立花についてはもう呆れてしまった。特に立花。それになんだ、僕に言ったのか。明らかに僕の方を見て言っていた。…気に食わないな。