第11章 海常高校のモデル
あたしたちの不安通り、涼君はさっき火神君がやったであろうプレイを何倍ものキレとパワーでやって見せた。そのまま火神君は尻餅をついた。そしてテツ君から発せられている言葉が、脳内で同じように廻る。たった数か月で予想を遥かに超える速さで彼らの才能は進化している…
「こんな拍子抜けじゃやっぱ…挨拶だけじゃ帰れないスわ。やっぱ黒子っちください。海常おいでよ。また一緒にバスケやろう。マジな話、黒子っちのことは尊敬してるんスよ!こんなとこじゃ宝の持ち腐れだって!」
何を言ってるの…あたしは涼君をキッと睨む。それにも気付かず、涼君はテツ君を勧誘する。あたしに気が付いた茉実が宥めようとしているが、今はそれだけじゃ腹の虫が収まりそうにもない。テツ君はもちろん受けるはずがなかった。それでもしつこくテツ君に言い寄る。キセキの世代を倒すと言い切ったテツ君にも冗談としか返さない。
『涼君』
あたしの声にハッとした涼君は、ここで初めてあたしが怒っていることに気が付いた。
「え…どうしたんスか、朱音っち…?何怒って…」
『これ以上冗談言うなら、あたしも黙ったまま引き下がらないよ』
「何言ってるんスか!冗談言ってるのは黒子っちの方で…」
「冗談苦手なのは変わっていません。本気です」
『そういうことだから。それに…何も知らないのに誠凛のこと馬鹿にすると、許さないから』
怒りを露わにしたあたしに、周りの皆は何も言えなかった。涼君でさえも。それを破ったのは火神君だった。
「そういうこった。借りは試合で返してやるよ」
涼君は一言ごめんとあたしに向かって呟くと、体育館を後にした。
『テツ君、火神君。今のままじゃ勝てないのは分かってるよね。涼君は強い。けど二人の息が合えばきっと。先輩方も』
日向「分かってる。その…ありがとな、俺らのことあんな風に言ってくれて」
『なーに言ってるんですか!当たり前のことを言ったまでです!さ、練習しましょう!何ならゲーム練にだって付き合いますよ!』
あたしの言葉に女バスの皆はもちろん、男バスの皆さんも頷いてくれた。