第10章 入学式、そして始動…!
「そもそもお前も幻の6人目なんて言われるぐらいだろ。なんで他の5人みてーに名の知れた強豪校に行かねーんだ?お前がバスケやるのには…なんか理由あんじゃねーの?それは若槻にも言える。お前も強かったんだろ?」
『…あたしは1からバスケがしたかっただけだよ。強豪校じゃなくてもバスケは出来る。あたしはあたしのバスケがしたかったんだ』
「…黒子は?」
火神君は納得がいっていなかったようだけど、それ以上追及してこなかった。火神君がテツ君に話を振ったと同時に、あたしもテツ君を見る。あたしもずっと聞きたかったこと。テツ君が誠凛という新設校でバスケを始めた理由を。
「僕がいた中学校はバスケ強かったんですけど、そこには唯一無二の基本理念がありました。それは、勝つことが全て。そのために必要だったのはチームワークなどではなく、ただキセキの世代が圧倒的個人技を行使するだけのバスケット。それが最強だった。けど…もはやそこにチームは無かった。5人は肯定してたけど僕には…何か大切なモノが欠落してる気がしたんです」
朱音さんなら分かりますよね、とテツ君は悲しそうに笑う。あたしも嫌いだった帝光のバスケ。けどテツ君はテツ君のバスケで彼らを倒すつもりだったらしい。あたしが諦めた彼らのバスケを、テツ君は自分の手で崩そうとしている。
「今僕がバスケをやる一番の理由は、君とこのチームを日本一にしたいからです」
「…相変わらずよくそんな恥ずかしい台詞ばっか言えんな。てかどっちにしろキセキの世代は全員ぶっ倒すしな。したいじゃねーよ、日本一にすんだよ!」
火神君の何とも頼もしい台詞に、あたしたちは顔を見合わせると笑って頷いた。そして火神君と別れ今は二人で歩いている。
『まさかテツ君にあんな野望があったなんて』
「黙っていてすみません。連絡も…あの頃の僕は一人で考えたかったんです」
『気にしないで。それにしても火神君って不思議だね』
「そうですね。けど火神君とならどこまでも行けそうな気がするんです」
テツ君の新しい光、火神君。二人がコートに立っている姿を想像して、嬉しくなった。
翌日、校庭には"日本一にします"という文字があった。テツ君が火神君に、そしてバスケ部に向けて言った言葉というのはすぐに分かった。ここから本当に皆のバスケが始まる、そう期待を胸に秘めて。