第10章 入学式、そして始動…!
『…彼らは強いよ。火神君が思っている以上にね』
「まじかよ!やっべー!って…お前誰だっけ?」
『あ、ひどいね、火神君。って、あたしも人のこと言えないか。…火神君の前の席の若槻朱音だよ。よろしく』
「若槻…?あ、昨日の挨拶の奴か。…あれ?お前この匂い…」
『!!!?/////』
火神君はあたしの首筋に鼻を近づけて匂いを嗅いだ。まさか男の子にそんなことをされるとは思ってもいなかったし、何よりここまで接近してきた男の子は征ちゃん以外に思い出せなかった。女子生徒のキャーという甲高い声と、男子生徒のウオーという雄叫びが教室内に響き渡る。その声に驚いてあたしから離れた火神君は、真っ赤であろうあたしの顔を見ると、自分のやった行いに気が付いたのか、自分もみるみる顔を赤くした。
「わ、悪ぃ!そんなつもりじゃ…」
『ううううううん!あたしもちょっとびっくりしただけだから…』
女子生徒「火神君って大胆!」
男子生徒「死ね火神ぃ!」
鳴りやまない野次に、あたしも火神君も顔の火照りが収まって来て、互いに笑いあった。
「悪かった。本当に悪気は無くて…お前から強ぇ奴の匂いがしたからよ」
『強い匂い?どんな匂いなのそれ…』
花帆「火神君って見かけによらず馬鹿で面白いんだね!」
宗助「だな!最初は怖くて話しかけられなかったけど、ここまで馬鹿だとはな!」
「馬鹿馬鹿言わねーでくんない!?」
それから火神君は親しみやすいことが分かり、クラスの皆の注目の的になった。その火神君の後ろでひっそりと静かに本を読んでいるテツ君を見ると、不意に目が合った。テツ君は困ったように笑うと、すぐに本に目を移した。そこで気付く。またテツ君と話すことが出来なかった、と。