第10章 入学式、そして始動…!
『えーっと…鈴城中出身、若槻朱音です。趣味はバスケットボールで、さっきも一部の人には言ったけど、女子バスケットボール部員募集してます!初心者でも大歓迎なんで!男子の皆さんはどこかのアホの子みたいに変装して来ようなんて思わないでください!以上です』
宗助「それって俺のことだよな!?」
クラスからまた笑いが起こる。よし、掴みはOKと。するとあたしの席の後ろから椅子を引く大きな音が騒がしかった教室を静かにさせた。
「火神大我、中学校はアメリカにいた。好きなものはバスケ。以上」
あまりにも簡潔な挨拶にはもちろん、彼から発せられる虎のような威圧感に誰もが圧倒されていた。そしてその静寂した空間に、聞き馴染んだのにも関わらず、暫く聞いていなかった声を耳にした。
「帝光中出身、黒子テツヤです。好きなものはバスケと読書です。よろしくお願いします」
『!?テツ君!?』
「…どうも。お久しぶりです、朱音さん」
意識がテツ君に引き込まれていく中で、間にいる火神君が興味なさそうにあたしを見たのがかろうじて分かった。
先生「あー、知り合いだったのか。それは後にしてくれー。じゃあ最後に俺な。八石湊(やついし みなと)だ。年は36で教科は数学なー。ま、1年間よろしくな。以上、解散!」
適当すぎるよ、この先生…なんて思ってる場合じゃない。後ろの後ろにテツ君がいた。それに気が付かないなんて…けど今はそんなことはどうでもいい。テツ君と話がしたい。
石黒「おい、若槻ー、お前俺に喧嘩売ったんだよな?皆の前で恥かかせやがって!」
口では乱暴に言う石黒君の顔は笑っていた。石黒君には悪いけど、今は話に付き合っている余裕はない。なんせテツ君は影が薄い。しかも半年以上会っていなかったのもあって、より見つけにくくなっていた。
花帆「石黒君が朱音に変態発言したからだよー!」
生徒「えー?何々?俺らも混ぜて!」
花帆もやって来たのを皮切りに、いろんな生徒があたしたちの机の周りに集まってきた。おかげで身動きが取れない。
『ちょ、待って!テツ君!』
あたしの声も周りにかき消され、テツ君はそのまま帰ってしまった。