第9章 あっという間に…
去年の12月頃、突然綾から電話が来た。メールはたまにしていたけど、電話が来るのは初めてだった。電話の内容は、綾が征ちゃんを好きになったということ。綾は誰かに恋をすることは失礼ながら想像出来なかった。あたしと一緒で、ずっとバスケに夢中だと思っていたから。応援してくれるよね?という言葉に対して、うんと言ってしまった。それからというもの、征ちゃんから連絡が来る度に綾に申し訳ないという気持ちと、何故か正体不明の気持ちが心を支配した。あたしはそれを打ち消すために征ちゃんからの連絡は、たまにメールを返信するだけで、電話には出なかった。そしてバスケに没頭した。
そして大ちゃん。大ちゃんは去年の合宿で予想した通り、大ちゃんの周りには、大ちゃんに敵う人はいなくなってしまった。才能が開花するのが早すぎたのだ。今の大ちゃんの相手が勤まるのは同じキセキの世代のみだろう。だけど、以前征ちゃんから聞いた話では、キセキの世代が練習中に本気を出すことは禁止しているらしい。だからと言ってあたしがまたゲームをしても逆効果なだけだし、何より今回こそ負けるかもしれない。そうなってしまえば、大ちゃんのバスケに対する情熱は本当に皆無になってしまう。それだけは避けたかった。
そしてキセキの世代。彼らも大ちゃん同様才能が開花していた。そしてそれと同時に去年まではかすかにのこっていたチームプレイという理念が、完璧に消えた。
記者「それでは最後に去年からの主将で同じPGの若槻朱音さんと赤司征十郎君にお話しを聞かせていただきます。まず初めに、お二人は美男美女、才色兼備で自他共にb認めるベストカップルだとか!」
「何言ってるッスか!それは俺のことだと思うッス!」
「黄瀬、何を言っているのだよ。冗談はやめろ」
「そうだよ~。いくら黄瀬ちんでもひねりつぶすよ」
記者「は、ははは…で、実際にはどうなんですか?」
「僕としては嬉し…」
『付き合っていませんよ』
綾の顔がちらついたあたしは、その答えに即刻否定した。