第8章 全中で
「僕が知るはずもないだろう」
『え!?征ちゃんでも分からないことあるの?』
…あれ?あたし何か地雷踏んじゃった?征ちゃんの顔がみるみるお怒りに…ゴメンナサイ、征ちゃんいや赤司様。
「どういうことだよ、赤司。まさかあの勝負、降りたのか?」
「何を言っている、大輝。僕の気持ちは変わらないよ」
茉実「じゃあそれは何?」
皆があたしには分からない話をしている。完璧にあたしは蚊帳の外だった。この間皆と知り合った綾ならきっとあたしと同じポジションにいるはず!と思い綾を見ると、綾は慌てたようにニッコリと笑う。気のせいか、一瞬睨まれてると思っちゃった…。
「それは片岡さんに聞いてくれ。僕だって迷惑してるんだ」
『征ちゃん、いくら征ちゃんでも綾を悪く言わないで』
あたしは綾を迷惑と言われたことに対して征ちゃんに意見した。征ちゃんは茉実たちのことを決して悪くは言わない。それはきっと茉実たちのことを認めてくれているからであって、そしてそれは綾に対しても同じだと思っていたのだから。
綾「…ほら、朱音もこう言ってくれてるんだし、仲良くしようよ、征ちゃん!」
「その名前で僕を呼ぶな!」
征ちゃんの声が珍しく大きくなった。その場にいた全員が言葉を失う。もちろんあたしも。
「…すまない。取り乱してしまったようだ」
征ちゃんが申し訳なさそうに謝るけど、あたしはそれどころじゃなかった。
『…ごめんね、征ちゃん。…じゃなくて、赤司君。征ちゃんって呼ばれるの、嫌だったんだね』
「!?ちがっ…」
『いいの!赤司君は優しいから、嫌でも断れなかったんだよね。大丈夫、もう征ちゃんなんて呼ばないから』
そんなにも呼ばれたくない呼び方をしていて、それに気が付かなかった自分自身が嫌になった。