第8章 全中で
朱音から片岡の話を聞いている時から、妙な違和感が僕を襲った。辛そうに話す朱音と反面、それを聞く片岡の眼が威圧的だった。涼太を先頭に全員が片岡を褒める。だが僕は黙っていた。
綾「それじゃあ私はもう行くよ。私は出れないけど、私のチームメイトは強いんだからね?」
『あたしたちだって負けないよ!じゃあ、またね』
まただ。片岡が朱音を見る眼には、確かに怒りが含まれている。正確には、朱音とテツヤを見る眼が。その場で全員が解散したが、真太郎に先にバスに行っているように伝えると、片岡が歩いて行った方向へと向かった。
暫く歩くと、自販機の前で悔しそうに拳を壁に向けている片岡の姿があった。僕が声をかけると、慌てたようにその拳を引っ込めた。
綾「あ、赤司君!どうしたの?何か用かな?」
「…僕の前では隠し事は通用しないよ」
少し目を細めて威圧感を与えると、彼女は少し考え、そして笑った。
綾「やっぱり。赤司君にはばれてるって思ったんだよねー。私を見る眼が冷たかったし」
朱音を見る眼とは大違い、と付け加えると僕の中の仮説が確信へと変わった。
綾「赤司君ってさ、朱音のこと好きでしょう。もちろん、異性として」
「…そうだが、それと君とが何の関係があるんだ」
綾「大有りだよ。私は朱音と黒子君が許せないの。私から全てを奪った、あの二人がね」
片岡は楽しそうに笑う。確かに怪我はスポーツに付き物であるが、彼女の場合は明らかに被害を受けた。テツヤに対しては自分を怪我させた本人として、朱音に対してはそれを見捨てた対象として。