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It’s a miracle!!!

第8章 全中で


捺美「だったら何で鈴城に来なかったの?」

綾「朱音と一緒の学校に行きたかったのは本当だよ。けど理由があるんだよ、捺美ちゃん」

綾の言いたいことは分かる。綾が言う理由、それはつまり綾の怪我。話してもいいかな、と綾があたしに言う。あたしはテツ君を一度だけ見て、ゆっくりと頷いた。

綾「私が事故にあったのはクラブの帰り道、つまり朱音と一緒に帰ってた時だったんだけどね…」

綾の言葉に次第にあたしも過去の記憶に包まれていった。忘れもしない、あの雨の日を。

―――――――――――

綾「朱音ーっ!一緒に帰ろっ!」

『うん!あ、お母さんが綾と一緒に食べてってクッキー焼いてくれたの!』

綾「やったー!おばさんのクッキー大好き!」

クラスは一度も一緒になったことのない綾。それに出会ったのも1年前のバスケクラブで。けれどあたしと綾は惹かれあうように仲良くなっていった。幼馴染で親友の茉実とはまた違う、大好きなバスケで出会ったかけがえのない親友だった。

『うっわー、雨降ってるよ。綾、傘持ってる?』

綾「持ってないよ。今日天気予報で晴れって言ってたもん」

『きっと通り雨だからすぐに止むよね。クッキー食べて待ってようよ』

あたしと綾は体育館の入口で、お母さんの焼いたクッキーを食べながら雑談をした。バスケの話や学校の話、そして小学生ながらにも恋愛の話もした。綾は可愛い。実際に男子からも人気だった。

綾「朱音、この前三鷹君から告白されてたよね?どうしたの?」

『何で知ってるの!?』

綾「三鷹君、私と同じクラスだからね」

『そっか。嬉しかったけど、断ったよ。そういう綾だってクラブの坂下君から告白されてたじゃん』

綾「私ー?私も断ったよ。今はバスケに夢中だもん!朱音と一緒に出来るバスケに!」

『あたしもっ!』

あたしは文字通り綾が大好きだった。特に綾とやるバスケが。小学生の頃は今みたいにPGではなく、PFをやっていた。綾はSFだった。あたしと綾のダブルエースであたしたちの学校は最強とまで言われていた。

綾「雨、やまないね」

一体どれくらい時間が経ったのか。いつの間にかたくさんあったクッキーは無くなり、練習の疲れもあり眠気が襲って来ていた。季節は春。いくら暖かくなったからと言っても、まだまだ寒さは消えはしなかった。
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