第8章 全中で
あたしたちと同じ小学校だった茉実は不審に思う。それもそのはず、茉実と綾は面識が無い。
綾「茉実ちゃんが知らないのもしょうがないよ」
茉実「!どうして私の名前を…」
綾「知ってるよ。朱音の親友で鈴城中エース、神守茉実ちゃん。っと…ここじゃなんだから外で話そう、朱音。黒子君たち帝光中の皆さんはどうする?朱音のこと随分と慕ってくれているようだけど」
「もちろん行くに決まってるだろ」
大ちゃんの返事に皆も黙って頷く。それを嬉しそうに、愛されてるねとあたしにこっそり伝えると、近くにいた海山中の人たちに何かを伝え、ホールへと歩いて行った。あたしたちも誰も何も言葉を発せず、綾に付いて行った。
ホールにはミーティングで使用されているようなソファが何個もあった。残っている学校も少ない上に今日は今行われている試合が最後のため、そこにはまばら程度しか人はいなかった。それでも帝光と鈴城のジャージを着ているあたしたちは嫌でも目立ってしまう。その中でも綾は海山中のジャージを堂々と掲げ、ニコニコと笑って座っていた。
綾「さ、どこから話そうかな」
「片岡サンは朱音っちの何なんスか」
綾「いきなりだね、黄瀬君。何って言われても…親友かな」
『あたしはライバルだとも思ってるよ』
綾「それはもちろん私もだよ、朱音。…で、さっきも言ったけど、私たちは同じ小学校だったんだ。けど、茉実ちゃんとは会ったことがない」
「…転校か。小学生の転校は親の都合とかで珍しいことではないのだよ」
綾「さすが緑間君。けど、惜しい」
綾は挑戦的に真ちゃんを見る。それが気に食わなかったのか、真ちゃんの眉間に皺が寄る。
綾「私は小学5年に上がってすぐに交通事故にあったの。結構大きな事故にね」
茉実「…聞いたことがある。何でも下校中に信号を渡っていた女の子に飲酒運転の大型トラックが突っ込んできたとか…」
綾「当たり。もちろん私はバスケはもちろん、まともに歩けなくなったの。だけどバスケの熱は冷めなかった。どうしても朱音と一緒にもう一度コートに立ちたかった」
「だから福岡か。確かに腕の立つ医者がいるとは聞いたことがある」
征ちゃんが腕を組みながら思い出すように答える。それに反応したのは捺美だった。