第8章 全中で
審判「タイムアップ!」
審判の笛と共に、試合の終わりを告げられた。結果はあたしたちの勝ち。目の前には悔しそうに涙を流す白河さんがいた。
白河「…来年こそは絶対に勝つ…」
それだけを吐き捨てると、白河さんは自分のベンチへと戻っていた。それからギャラリーに目を向ける。そこには綾が笑顔であたしに拍手を送っていた。少しだけ笑うと、あたしもベンチへと戻り、皆と一緒に体育館を後にした。その途中で藍に尋ねられた。
藍「ねぇ、朱音。さっきの海山中の人たち、誰なの?」
凜子「海山中?」
事情が分からない凜子たちに茉実が説明をしてくれた。
『海山中の人たち全員は知らないよ。けどその中の一人、片岡綾はあたしの親友でライバルなんだ。…間に合うとは思っていなかったけど』
語尾が小さくなっていくのは自分でもよく分かった。ドキドキやワクワクといった感情があたしの心を支配していく中で、確かに不安感も存在していた。
ギャラリーに上がり、綾の姿を探す。話がしたかった。そして見つけた。綾の隣にはテツ君がいた。二人は楽しそうに話している。横で征ちゃんたちがポカンとしているのが分かった。あたしたちもその場に向かう。残り数メートルというとこで征ちゃんがあたしたちに気付き、朱音とあたしを呼ぶ。それに釣られて綾もあたしを見た。
綾「…久しぶり、朱音。さっきはおめでとう。また強くなったね。それに綺麗になった」
『綾…ありがとう。その…元気、だった?』
綾「相変わらず朱音は優しいね。この通り、もう大丈夫だよ。ただ、今回は間に合わなかったけど」
綾の言葉に事情を知っているあたしとテツ君は下を向いてしまった。それを征ちゃんの言葉が救ってくれた。
「朱音。彼女は誰なんだ。君の知り合いのようだが」
綾「あ、自己紹介まだだったよね。初めまして、福岡県海山中2年片岡綾です。朱音と黒子君とは同じ小学校で同じバスケクラブだったの」
茉実「…どういうこと?」