第8章 全中で
「ストップ。何やってるんスか?」
あたしの顔を目掛けて飛んでくるはずだった彼女の手が空中で止まっていた。そして白河さんの後ろからは黄色い綺麗な色の頭が見えた。
白河「っ!?」
「悔しい気持ちも分かるッス。けどアンタは今何をしようとしたッスか?それはプレーヤーとしての正しい選択じゃないはずッス。それに…」
涼君は掴んでいる手に力を加えた。それに伴い白河さんの顔に痛みの色が浮かぶ。
「いくら女の子でも、朱音っちを傷つけるなんてことは許さねーよ」
涼君の人懐こそうな表情からは一変、凄みのあるモノへと変化した。すると白河さんは泣きそうな顔をして逃げて行った。そしていつの間にかいなくなっていた桜蘭中。彼女らに囲まれていた帝光の皆は不機嫌な顔をしていた。
「「「「「「絶対に勝て!」」」」」」
彼等から発された言葉は単純であり、だけどあたしたちの闘志をいともたやすく燃え上がらせるモノだった。鈴城の皆は笑顔で頷くと鞄を持って歩き出す。下のコートではもう次のチーム同士がアップを行っていた。
それからあっという間に時間は過ぎ、あたしたちはベンチに入った。どこからともなく溢れ出す歓声。昨年度の初優勝校と準優勝校が現れたのだ、観客からしてみれば好カードであろう。シュートタッチを確認するために、コートの中に入る。すると白河さんが目の前に来た。
白河「…あなたのせいで恥をかいたじゃない。黄瀬君にも嫌われてしまったわ。だから私はあなたを倒して黄瀬君に認めてもらうから。覚悟しておきなさい」
…なるほど、白河さんは涼君のファンだったのか。確かに自分の好きな人にあれだけ言われたら傷つくかもなぁ、なんて思いながらシュートを打つ。それに彼女には申し訳ないけど…
時間となり、全員をベンチに集める。
『今日のスターティングメンバーはミーティング通り変更なし。凜子、優希、捺美、雅、汐音でいく。暴れておいで!』
「「「「「はい!」」」」」