第8章 全中で
あれからあたしたち鈴城と帝光は順調に勝ち上がっていた。そして今日は準々決勝。つまり桜蘭中との試合。試合まであと2時間弱。控室が空くのは今やっている試合が終わってからのため、あたしたちはスタンド席の空きスペースで柔軟を行っていた。そして何故かすぐ隣では桜蘭中が同じように柔軟を行っていた。なのでミーティングが行えないでいた。
「やぁ、朱音。試合はもう終わってしまったのか?」
『征ちゃん!それに皆!まだ始まってないよ』
「間に合ったみたいで良かったスね~!」
「だからまだ大丈夫って言ったのに~。ミドチンが急かすから」
「なっ!お前こそ珍しく走ってたじゃないか!」
「やべー、咽渇いちまった。さつきー、ジュースあるか?」
「青峰君はちょっと飲みすぎ!お腹壊しちゃうよ!」
「皆さん、ここは会場です。もう少し静かにしてください」
征ちゃんを先頭に、帝光レギュラーの皆があたしたちの前に現れた。そして今ではすっかり打ち解けた鈴城レギュラーと楽しそうに会話をしている。
茉実「で、アンタらは何しに来たの?」
「応援に決まってるじゃないッスかー!桃っちに聞けば、次の対戦相手は一番骨があるとかないとか!まあ朱音っちがいれば余裕だと思うッスけど!」
藍「あー…黄瀬君。ちょっと空気読もうか」
「あぁ?どういうことだよ」
凜子「青峰君もストップ!」
「全く…お前たちはもう少し周りを見るべきなのだよ」
今の状況を理解していない大ちゃんと涼君、それにあっ君に盛大に溜息をつき、そしてあたしたちの横にいる桜蘭中に目を向ける。そこにはすごい形相でこちらを見ている桜蘭中の…いや、白河さんの姿があった。あたしと征ちゃんは溜息をつくと、桜蘭の方へ歩いて行った。
「先ほどは気付かなかったとはいえ、うちの部員がすまなかった」
『あたしからも。注意が足りませんでした』
桜蘭主将「いえっ!私たちは気にしてませんから!あ、あの…帝光の赤司さんですよね!ずっとファンでした!握手してください!」
『「…え?」』
呆気にとられたあたしと征ちゃんの前には、真っ赤な顔をした桜蘭の主将さんが頭を下げて征ちゃんに向かって手を伸ばしている。それを皮切りに、今まで黙っていた桜蘭の部員たちも征ちゃんだけではなく、大ちゃんや涼君たちの元へ顔を真っ赤にしながら向かって行った。