第8章 全中で
「すまない。神守たちの言う通りだ。朱音、今度僕も時間が空き次第連絡するよ」
確かに僕は逃げていただけかもしれない。必死に自分の行動を合理化して、僕自身に都合が良い答えに書き換えていた。それに彼女のことも。朱音がそんなことで嫌いになるような軽薄な女性ではないことぐらい、僕だって分かっていたはずだ。
『うん。待ってるね、征ちゃん』
先ほどまで頭にはてなを浮かべていた朱音は、僕に向かってにっこりと微笑んでくれた。なりふりは構っていられない。この笑顔が僕だけに向けられるその日を目指して。
「あぁ。…行くぞ、帰って練習だ。朱音、君たちの活躍を楽しみにしてるよ」
『うん!征ちゃん、それに皆も。頑張ってね!あたしたちも帰って練習するよ!』
僕たちは互いにバスでこの会場まで来ていた。それぞれのバスに向かって…いや、それぞれの優勝という目標に向かって歩き出した。
「まさか赤司っちがあんなこと言われて黙ってるなんて思わなかったッス!ねぇ、黒子っち!」
「僕は赤司君が朱音さんと連絡を取ってないことの方が驚きました」
「赤ちん、実はウブだったんだね~」
「紫原、それは最初から分かっていたことなのだよ。それに黄瀬も。朱音のことになると赤司は赤司でいられなくなるのだからな」
「赤司じゃねぇ赤司か。ははっ!それはそれで面白ぇかもな!」
「…無駄口を叩くな。それから僕に対するその言葉、しっかりと受け取ったよ。今日はメニュー10倍だ」
「「「「「死んじゃう!!!!」」」」」